「クラウドバックアップはとっておいたほうがよいもの」と漠然と思っていても、具体的にどのような方法があるのか理解していない、実際におこなってはいない、という企業も少なくはないでしょう。
クラウドバックアップには、スマートフォンなどの携帯端末で個人利用ができるものや、PCのデータやファイルを保存し業務上の過失などによる紛失のリスクを減らす法人向けのものがあります。
業務に利用することを前提として、クラウドバックアップの必要性やメリット・デメリット、クラウドバックアップをする具体的な方法について解説します。
クラウドバックアップとは
クラウドバックアップとは、クラウドストレージ上にパソコンやスマートフォンのデータを複製し保存しておくものです。
災害やトラブル時に備えてバックアップをとっておくことの重要性は、PCを利用して業務をおこなっている方ならだれもが感じたことのあるところでしょう。
クラウドストレージが普及するまでは、バックアップといえばサーバーやHDD、USBメモリなどの機器や記憶媒体が必要で、導入や運用にコストがかかるものでした。
近年はインターネットを介してクラウド上の仮想サーバーにデータを保存できるクラウドストレージのサービスが充実したことにより、法人だけでなく、個人でもクラウドバックアップを利用する人が増えています。
クラウドバックアップの必要性
クラウドバックアップが必要な理由にはさまざまなものがあります。
目的意識を持ってクラウドバックアップをおこなうことが重要です。
マルウェア対策として必要
クラウドバックアップが必要な理由の代表的なものには、マルウェア対策があげられます。
悪意をもってユーザーのデバイスに不利益をもたらすプログラムである「マルウェア」にはいくつか種類がありますが、ウイルスやワームは一度PCに入り込んだら自己増殖し、その影響が広がっていきます。
物理的につながっている記憶装置や同じネットワーク上にあるデータは等しく影響を受けるリスクを負いますが、クラウドストレージはアクセス権限が必要になるため、マルウェアが入り込む可能性が低くなります。
BCP対策や多様な働き方に不可欠
BCP対策とは、災害や感染症流行などの緊急事態下における事業継続計画を指します。
会社が物理的な被害を被り、オフィスでの稼働やPCの利用ができない場合でも、クラウドストレージにデータが保存されており、自宅のPCやスマートフォンから接続できるよう準備しておけば、緊急事態による業務への影響を最小限に減らせます。
また、多様な働き方によりリモートワークをおこなう社員がいる場合、脆弱なWi-Fiの使用によるマルウェアの攻撃や、ノートPCに保存したデータの流出が心配なこともあるでしょう。
クラウドストレージにデータがバックアップされていればリモートワークにおけるマルウェア対策になり、PC本体にデータを残さずクラウドストレージに毎回保存する運用にしていれば、PCの紛失や盗難によるデータの流出も防げます。
導入・運用・拡張コストの削減
バックアップをとるためには当然さまざまなコストがかかります。
自社でバックアップをおこなう場合、サーバーやHDDなど機器の購入、耐震や防水設備の設置、さらには設置場所の確保と賃料、運用のためのIT人材の雇用が必要となります。
BCP対策として会社とは離れた地域にサーバーを置く場合はデータセンターの利用も検討しなければなりません。
また、容量を拡張したいときにはさらに追加費用がかかり、会社の金銭的・人的負担は大きなものになります。
クラウドバックアップであればこれらの導入・運用・拡張のさまざまな作業は、サービス提供者であるベンダーが担うことになり、インターネット上の仮想サーバーを利用するので機器の購入なども必要ありません。
拡張したいときも連絡して予算内での対応を依頼すればよいだけなので、バックアップにかかる会社の負担は格段に軽くなります。
クラウドバックアップをするべきデータとは?
さまざまな業務がデジタル化されている昨今では、会社がもつデータは増加の一途をたどっています。
クラウドストレージの容量を拡張すればすべてを保存できるかもしれませんが、その費用や手間を考えるとあまり現実的ではないでしょう。
どのようなデータを優先的にクラウドにバックアップするとよいか考えてみましょう。
長期的な保存が必要なデータ
会社で取り扱う書類には、経理や雇用、総務関係など、保存期間を法律で決められているものが多くあります。
これらの書類は紙のみで保存していると劣化や紛失の恐れがあるため、クラウドバックアップをすることが推奨されます。
たとえば国税関係の帳簿や書類においては、国税庁のホームページ内にある「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」から引用しますと、
「法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません」(No.5930 帳簿書類等の保存期間から引用)
と記載されています。
この「帳簿」には総勘定元帳や仕訳帳などさまざまなものが含まれ、「書類」は注文書や契約書、領収書も対象になります。
PCで作成した帳簿の電子データだけでなく、取引先から受領した見積書や領収書も解像度など一定の条件を満たしてスキャンしたものであれば電子保存が認められているため、クラウドバックアップに適しているでしょう。
業務に必要な会社にとって重要なデータ
会社の経営上不可欠なデータのほとんどは法律によって保存が義務づけられていますが、そうでないものの中にも業務をおこなうのに重要なデータはあるでしょう。
取引先や顧客とのやりとりの記録や議事録、業務マニュアルやナレッジなどは、クラウドにバックアップをとっておくと着実に業務を進めるうえで役立ちます。
災害などのトラブル時はもちろん、急な異動による引き継ぎや新入社員の教育の際にも参照しやすいでしょう。
容量が大きなデータ
動画や画像などのデータは、文章ファイルに比べてサイズが大きく、PCの容量を圧迫してしまうおそれがあります。
しかし、これらのデータは文字だけではわからない貴重な情報を含んでいる場合や、証拠能力をもっている場合もあり、あとで必要になるかもしれないと思うとなかなか削除できず、知らないうちにPCの動作に影響して業務効率を下げていることもあるでしょう。
PCのスムーズな動作のために思い切って削除してしまうよりは、クラウドバックアップをすることで、快適かつ確実性のある業務ができます。
クラウドバックアップのメリット
クラウドバックアップのメリットについてみていきましょう。
データを失うリスクを軽減できる
クラウドバックアップを利用すれば、業務上必要な書類やデータを誤って削除してしまった際に、データを復元できます。
上書き保存したデータをもとに戻したい場合も、元データを呼び出すことが可能です。
さまざまな業務がデジタル化され、日々多くのデータを扱う社員が増えているため、バックアップの必要性は高まっているといえます。
会社の信頼性向上につながる
企業によっては自社サーバーやNAS(ネットワーク対応HDD)など、社内でデータを管理している場合もありますが、クラウドバックアップの方が比較的障害が少なく、物理的な故障の影響を受けず安全にデータを管理できます。
マルウェア対策やBCP対策に優れているため、安定した業務が可能になり、会社の信頼性向上につながります。
トラブルの際に直ぐに復旧できる
PCの故障や紛失などのトラブルが起きた際、クラウドバックアップがあれば、新しい端末にすぐさまデータを復元できます。
災害などで出社ができないときや会社PCの操作ができないときに、社外から接続し業務を継続することもできます。
クラウドバックアップがあることで、トラブル発生時のリスクを最小限におさえることができるでしょう。
自社でサーバーを設置するよりコストが低い
クラウドバックアップはインターネット上の仮想サーバーを利用し、運用や障害時の対応はサービス提供者であるベンダーがおこないます。
自社でサーバーを購入し、安全な設置場所を確保し、IT人材を雇用して運用するのと比較して、多くの面でコストを低く抑えられます。
簡単に拡張ができる
日々の業務で保存が必要なデータが蓄積されていく一方、データの削除は頻繁にはおこなえないため、基本的にバックアップデータは増加していくばかりです。
バックアップ容量の拡張が必要になった場合、自社サーバーの場合は機器の追加購入や対応作業が必要となりますが、クラウドバックアップならベンダーに依頼するだけで、大容量の拡張が可能になります。
クラウドバックアップのデメリット
クラウドバックアップには多くのメリットがある一方で、クラウドバックアップにデメリットもいくつかあります。
インターネット環境が必要
クラウドバックアップの利用にはインターネット環境が不可欠です。
USBやHDDのような記憶端末を利用したバックアップはPCとのオフライン接続が可能ですが、クラウドバックアップはオンライン接続のみになります。
インターネット環境がない場所や、接続が不安定な場所での利用はできないため、注意が必要です。
ランニングコストが必要
企業がクラウドバックアップをする場合、セキュリティなどを考えて有料のオンラインストレージを利用することが多いです。
利用自体は無料でスタートできますが、容量を拡張したり必要な機能をオプションで追加することを考えても、月単位で決まっているサービスの価格を支払うことが一般的でしょう。
月々一定の費用が長期的にかかるため、サービスを選ぶ際は後悔のないよう、自社にあったものをしっかり比較検討することが大切です。
セキュリティへの十分な注意が必要
クラウドバックアップはアクセス権限を付与すれば、社内だけでなくスマートフォンや自宅PCからも閲覧や編集が可能です。利便性が増す一方で、情報の流出には細心の注意が必要です。
交通機関や飲食店など人目が多い場所では接続しない、パスワードは定期的に変更ししっかり管理するなど、セキュリティへの配慮が必要不可欠です。
社員一人ひとりの意識と行動が重要になるため、研修会などをおこないセキュリティ教育を徹底しましょう。
セキュアSAMBAでクラウドバックアップをする方法
ここでは、4,000以上の会社で導入されている「セキュアSAMBA」のブラウザ版を例に、バックアップの具体的な方法を紹介します。
データをアップロードする
PC上に保存しているファイルをバックアップしたい場合は、ストレージ上にデータをアップロードします。
保存したいフォルダを開き、「アップロード」ボタンをクリックする。
「ファイルの選択」または「フォルダの選択」ボタンをクリックする。
PC上に保存されている、アップロードしたいファイルまたはフォルダを選択し、「開く」ボタンをクリックする。
選択したファイルまたはフォルダがアップロードリストに追加されるので、「アップロード」ボタンをクリックする。
ファイルまたはフォルダのアップロードが完了され、アップロードしたファイルを確認できるようになる。
セキュアSAMBAの場合、上記の方法の他に、ファイルをドラッグ&ドロップしてアップロードすることも可能です。
データをダウンロードする
ストレージ上に保存されているバックアップデータをダウンロードする方法です。
ダウンロードするファイルを右クリックして、「ダウンロード」をクリックする。
※ファイルを複数選択した場合は、zipファイルに圧縮され、zipファイル名の入力欄が表示されます。
保存場所を指定して、「保存」ボタンをクリックする。
ダウンロードが完了すると、指定した場所にファイルが保存される。
セキュアSAMBAのブラウザ版では、ブラウザ上で閲覧できるデータはテキストファイルや画像、PDFなどに限られます。
その他の文章ファイルや表計算データのバックアップを確認する際には、ダウンロードをおこなう必要があります。
過去のバージョンをダウンロードする
セキュアSAMBAには、各ファイルの更新回数ごとに10世代分のバージョン管理ができる機能が備わっています。
バックアップを繰り返している場合、過去のバージョンに戻すことやダウンロードをすることができます。
ストレージに保存されているファイルを右クリックして「バージョン」をクリックする。
ファイルバージョンダイアログが表示され、バージョン履歴の確認ができる。
「ダウンロード」ボタンをクリックすると、該当バージョンのファイルを PC 端末にダウンロードできる。
また、「元に戻す」ボタンをクリックすると、該当バージョンにファイルを戻すことができる。
バージョン機能自体が、ファイルの編集履歴のバックアップをとっていることになるため、重要な内容のデータを頻繁に更新する業務の場合は活用できるでしょう。
会社の安定性・信頼性向上にクラウドバックアップは不可欠
クラウドストレージ上にパソコンやスマートフォンのデータを複製し保存するクラウドバックアップは、自社サーバーでバックアップするよりも、マルウェア対策やBCP対策として優れています。
機器の購入や設置場所とIT人材の確保の必要がなく、無料もしくは月々一定額の支払いで安定した運用ができる点も大きなメリットでしょう。
クラウドバックアップには、多くの中小企業に利用されているオンラインストレージの「セキュアSAMBA」が最適です。
通信とファイルはすべて暗号化されているためセキュリティ性が高く、無料で5GBから試すことができます。また、有料プランは全てユーザー数が無制限です。
クラウドバックアップの導入を検討する際は、ぜひセキュアSAMBAをお試しください。