BCPは事業継続計画のことで、自然災害やテロ、火災、感染症の流行などの緊急事態の際でも、被害を最小限に抑え、事業の早期復旧や継続が見込めるような対策のことです。
いざ自社でBCP対策をしようと考えた際、基準となる事例が多くないことから、何に備えてどのようなことを優先しBCP策定をすべきかがわからないという企業も多いと考えられます。
災害をはじめとした緊急事態の際でも、企業の業務が早期復旧できるBCPを策定できるよう、各業種や災害別のBCP対策の事例を参考に進めていきましょう。
BCP対策事例:製造業における地震対策の例
製造業は、製造ラインが破損したり、製造するための従業員がいなくなったりなどした場合、継続危機になる可能性が高まります。
製造業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 製造ライン
- 製造する従業員
製造業であれば、製造ラインや作業をする人材の保全が出来なければ事業を継続することはできないので、これらの部分にBCP対策が必要です。
そのうえで、製造業の地震についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 危険箇所把握
- 商品・機器などの転倒・落下防止
- PCなどの固定
- 自社被災時の製造場所提携
- 持ち運びBCPマニュアルを全社員に配布
製造ラインの破損が最小限におさまるような対策をしたうえで、自社が被災しても代わりに生産ができる事業継承体制を整えるような事例が多くなっています。
備蓄体制や地震時の基本的な防災対策を整えることで、従業員の安全確保にも努めているということです。
BCP対策事例:販売業における地震対策の例
販売業はお店の倒壊、商品が入荷されない、売り手がいないなどになった場合、早期復旧が難しいとされます。
そんな中、地震の被災後も店の外で販売を再開し、従業員の生活も考えた販売業のBCP策定の事例です。
販売業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 従業員の命・生活
- 地域住民の生活
- 販売可能な体制
販売業であれば、販売できる商品がなければ事業として成り立たず、売り手の従業員がいなければ商品を販売することができないために、これらのBCP対策が必要です。
そのうえで、販売業の地震についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 重要商品の検討
- 従業員ロッカーに災害必需品の常備指示
- 販売用生活必需品の備蓄
- 帰宅困難者用の食料・寝具の備蓄
- 2ヶ月以内に完全復旧を目指して建設業者と連携
大地震の際に自社が地域住民の生活の要になると考え、生活に必要な商品選定や多めの備蓄をしている販売店が多いようです。
また、従業員が帰宅困難になった場合を考え、スペースや寝具などの確保・災害必需品の中でも運動靴やリュックなどの備えなどもしている企業もあります。
BCP対策事例:卸売業における地震対策の例
建設用資材などの卸売りやリフォーム工事の下請けをおこなっている企業で、災害勉強会に参加した際に「資材の確保が困難になる」との話を聞いたことから、BCP策定することを決めたそうです。
物流業界の資材確保の重要性を再確認したため、主に資材の確保に関して重点を起きBCP対策としています。
製造業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 資材の確保
- 従業員の安否
卸売業であれば、そのまま商品を売るにしても下請けの業務をおこなうにしても、資材が確保できなければ事業の早期復旧は見込めません。
また、販売の手配をしたり実際に作業をする従業員がいなければ、資材があっても事業に着手できないために、資材と従業員についてのBCP対策が必要です。
そのうえで、卸売業の地震についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 仕入れ先との支援協力提携
- 代替品対応マニュアル
- SNSで連絡手段確保
- 半分でガソリン満タン補充徹底
- 地域工務店100社と仮設住宅建設の連携
卸売業は資材などの確保ができないと、自社事業の早期回復や地域貢献ができないので、資材の確保に関する仕入れ先との協力提携を結んでいるケースが多いです。
また、正規の資材が確保できなかった際に「似たような資材を使用して作業をおこなう」という、代替案での対応についてもマニュアル化し、早急に対応できる体制を整えている事例もあります。
被災した際には多くの人が建物の修復などを望みますが、そのようなときにしっかりと資材を確保し人々の役に立つことで、会社も継続できると考えてBCP対策を進めています。
BCP対策事例:建設業における自然災害対策の例
建設業は屋根の上に登ったり、重い資材を扱ったりするため、緊急事態の際には従業員の命に直結する可能性があります。
こちらの企業は過去の台風による被害から災害対策をしはじめ、今後地震に直面した際の状況も踏まえてBCP対策を考えているようです。
建設業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 従業員の命
- 被災後の人員・支援受け入れ先の確保
建設業の場合、建設に携わる従業員がいなければ事業再開はできないと考えられるうえに、地震などの被災後は建物の修繕などから依頼が殺到すると考えられるため、これらの部分にBCP対策が必要です。
そのうえで、建設業の自然災害についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 風水害対応マニュアル
- 地震対応マニュアル
- 被災後電話対応マニュアル
- 被災後の修繕に必要な資材の大量確保
- 他県の工務店との応援協定
自然災害時のマニュアルについては「社員の安全確保」を最優先にすることを呼びかけ、被災後の行動指針を明記し迅速な行動ができるように準備します。
また、被災後には「屋根にブルーシートを貼ってほしい」などの連絡が相次ぐため、「余震が治るまでは屋根に登れない」など、電話の受け答えマニュアルも作成しているそうです。
細かな部分までマニュアル化し、徹底したBCP対策がおこなわれている事例だと言えるでしょう。
BCP対策事例:製造業における自然災害対策の例
台風で大規模停電が起こった過去から、大規模停電時・また水害時でも必要最低限の製造ができるようなBCP対策としています。
製造業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 必要最低限の製造ライン
- 製造する従業員の命
製造業の場合、製造する人材が確保できなければ再開はできないですし、自然災害で停電が起これば機器は動かず、浸水などで機器が故障してしまっても事業の復旧はできません。
そのため、これらの部分のBCP対策が必要だと考えられるのです。
そのうえで製造業の自然災害についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- クラウド型安否システム導入
- 安否システムの持ち運びマニュアル
- 製造設備を2階にも設置
- 強固な設備固定
- 自社で発電可能なように太陽光発電の設置
- 井戸水も使用可能
最低限の製造ラインを確保できるように、設備を2箇所に分ける・機材を動かすための電力確保などを重点に置いてBCP策定をしています。
ほかにも県外の企業と応援協定を締結し、一時的に生産加工を委託できる体制を整えているのみならず、一人で生産のすべてが完結できる社員を育てたりするなどの対策をおこなっている例があります。
BCP対策事例:食品運輸業における自然災害対策の例
冷蔵・冷凍の食品取り扱い及び配送をおこなっている企業の、地震・台風などによる自然災害を意識したBCPです。
取扱い商品を腐敗させないための措置、冷凍庫に取り残された従業員の救助などが盛り込まれています。
食品運輸業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 食品を腐敗させない
- 従業員の命
食品運輸業であれば、運搬するための食材が腐ってしまっては売り物にならず、当たり前ですが運送予定だった場所にも届けられないため、これらの部分にBCP対策が必要です。
そのうえで食品運輸業の自然災害についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 食品庫取り扱いマニュアル
- 冷凍庫内外の無線機設置
- 非常用発電機で電力確保
- 1日〜3年後までのガンチャートでやるべきこと明確化
- 社内用SNSで連絡手段の確保
顧客などの情報はデータ保管の安全性を考えて、クラウド化をおこなうというBCP対策をおこなっているケースがあります。
ほかにも全社員対象としてBCP関連の勉強会を月1回開催し、全体の意識向上を促すなども有効なBCP対策の事例と言えるでしょう。
BCP対策事例:バックオフィス業における感染症対策の例
新型コロナウイルス流行から、バックオフィス業の感染症流行に対する対策に遅れを感じ、BCP策定に踏み切った企業も多くあります。
感染症の対策は密にならないこと、人との接触を極力減らすことが重要であるので、テレワークでの業務ができるような内容を盛り込んでいる例が増えています。
バックオフィス業の場合、守りたいものは主に以下になるでしょう。
- 従業員の健康と命
- 事務業務の遂行
バックオフィス業であれば、活動拠点が被災してしまった際にデータが消失してしまえば、事業の早期復旧は非常に困難になります。
また、業務を遂行する従業員がいなければデータが残っていても事業の再開ができないために、これらの部分にBCP対策が必要です。
そのうえでバックオフィス業の感染症流行についてのBCP対策事例としておこなわれているものは、以下の事例があります。
- 書類の電子化徹底
- オンラインストレージ導入
- テレワークの促進
- フレックスタイム制度
- 各部署責任者と従業員との連絡先共有
- 取引先とのクラウドサービスでの取引
主に総務・財務・人事に関するBCP対策事例ですが、出社しなければ対応できない業務について、出社しなくても通常業務がおこなえるよう、業務内容の見直しをおこなうのもBCP対策として有効です。
特に紙媒体で管理していた書類については、電子化及びオンラインストレージで保管を徹底し、急なテレワークでも対応しやすい環境を整えておくのも重要です。
また、感染症流行対策としてもっとも大切な「オフィスに人が集まらない仕組み」を作れるように、テレワークだけでなくフレックスタイム制度など柔軟な働き方を取り入れるのもBCP対策として効果的でしょう。
BCP対策の事例から考える注意すべきポイント
BCPの対策例からBCP策定時の注意点は、主に4つ見受けられます。
BCP策定にあたり注意すべきポイントを考えていきましょう。
BCP対策の目的を理解する
BCP対策の目的を理解することは、当たり前ですがBCP対策を考えるうえで非常に重要です。
BCP対策の大きな目的は、以下の内容となります。
- 緊急時に事業が早期復旧できるようなにする
- 事業の存続ができなくなる可能性を低くする
要するに、緊急事態でも事業が存続できなくなって倒産などしてしまわないようにすること、事業をより早くに再開できるようにすることがBCPの目的です。
また、そのほかの目的としては以下の内容も考えられます。
- BCP対策をしている企業として他社からの信頼を得る
- BCP策定で、事業の中でも重要性の高い業務を把握する
自社がBCP対策を考えるうえでの目的を明確にし、目的に沿った対策を考えることが大切であると心得て、BCP策定をしましょう。
復旧の優先順位を明確にする
BCP対策で大切なのは、事業の早期復旧と存続が可能になる対策を考えることなので、この目標に対して効果的な順序で優先順位をつけるべきです。
さまざまな方面から見てBCP策定するのは非常に大切ではありますが、優先順位がついていないと、結果として事業の復旧がスムーズに進まなくなる可能性が考えられます。
復旧の優先順位を明確につけ、どの社員が対応することになっても迷いなく行動していけるように心がけるとよいでしょう。
具体的な状況を想定して対策を検討する
想定される緊急事態の内容によって、被害を受ける可能性がある箇所は異なります。
そのため、地震・台風・津波・感染症流行など、具体的な状況を想定してBCP対策の内容を検討している企業がほとんどです。
地震が多い地域か・川が近く浸水の可能性があるか・台風で電力供給が停止しやすい地域なのかなど、起こりえる緊急事態の内容を具体的に想像して、BCP対策の検討をしていきましょう。
最優先で守るべきは人の命である
どのような企業でも業種でも、人命がなければ会社の早期復旧や継続は困難であると考えています。
いくらマニュアルを作成しても、その内容を遂行できる人材がいなければ会社は成り立たないためです。
最優先で守るべきは人の命であることを念頭におき、BCP対策の事例から自社で考えられるBCP策定を進めていきましょう。
BCP対策で必須なのは情報データが破損しない管理方法
どの業種や企業でもBCP対策をする上で共通するのが、情報データが破損・消失しないように対策すべきという点です。
情報データとひとことで表すと「うちの事業は情報をあまり使わない業種だ。」と感じる場合もあると思います。
事業の早期復旧、存続に大きく関連する情報データとは、具体的に以下のような内容であることが考えられます。
- 従業員の連絡先
- 機器に関する使用方法
- 機器に関する復旧方法
- 業務の手順・方法
- 取引先データ(委託先・供給先・調達先など含む)
- 災害時マニュアル
これらの内容について「まったく取り扱いがない」という企業は、少ないのではないでしょうか。
従業員や社員と連絡が取れなければ、安否確認だけでなくその後の業務に関する指示はできません。
また、機器の復旧方法がわからなければ、事業の早期回復は困難になると考えられるでしょう。
どのような事業でも、なにかしらの機器を使用していたり、取引先があったり、従業員がいてこそ業務が成り立っているという場合が多いはずです。
企業や業種に関わらず情報データはBCPを考えたうえで重要であり、破損・消失しない管理方法を取り入れることは必須であると言えるでしょう。
BCP対策の事例やポイントから自社のBCP対策を進めよう
同じ業種のBCP対策事例を参考にしてポイントを理解したうえで、自社にとって必要な対策を進めることが大切です。
そのうえで、どのような企業や業種でも「情報データの管理方法」については、検討が必須だと言えるでしょう。
紙媒体やHDDなどの物理的に情報を残しておく管理方法では、被災状況によっては拠点のシステムやデータごと消失する可能性が考えられます。
BCP対策を考慮した情報データの管理方法は、オンラインストレージなどのクラウドサービスの利用がおすすめです。
オンラインストレージはインターネット上にデータを保存できるため、企業の活動拠点が被災した場合でも、情報データを安全に残しておける可能性が高まります。
オンラインストレージの「セキュアSAMBA」では、PCだけでなくスマートフォンなどのあらゆるデバイスから資料の管理・閲覧が可能なため、情報データを確認できる選択肢が広く、緊急時にも対応しやすいのです。
また、感染症流行の際には、業務に必要な情報をオンラインストレージで管理することから、テレワークへの移行がしやすくなります。
BCP対策を考える際には無料から使えるオンラインストレージのセキュアSAMBAの導入を検討し、事業の早期復旧が目指せるような対策をしていきましょう。