デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いはあまり言及されておらず、どちらも「デジタル化」の一部とされることがあり、分かりにくいかもしれません。
デジタイゼーションとデジタライゼーションは、共にDXを実現するための過程を表現しています。
しかし、デジタイゼーションとデジタライゼーションでは「デジタル化をする範囲」に違いがあります。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いについて確認していきましょう。
デジタイゼーションとは
デジタイゼーション(Digitization)は、業務の一部をデジタル化することです。
業務上のアナログなツールをデジタル機器に変えるのは、デジタイゼーションと言えます。
デジタイゼーションについて、経済産業省の資料には以下のように書かれています。
「アナログ・物理データのデジタルデータ化」
この資料では、デジタイゼーションは企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための具体的なステップとして位置づけられています。
DXはデジタル技術を用いて社会やビジネスモデルを根本から変革することです。
しかし、DXをいきなり行うのはハードルが高いものです。
DXよりももっと身近で取り組みやすいデジタル化の概念が、デジタイゼーションと言えるでしょう。
デジタイゼーションの事例
デジタイゼーションをより具体的にイメージできる事例を確認していきましょう。
紙の書類をパソコンで作りデジタル化する
従来は紙ベースで作っていた書類をパソコンで作成し、デジタル化するのは代表的なデジタイゼーションです。
デジタル化することで「物理的な保管場所を取らない」「内容が検索検索できる」など書類の管理が容易になります。
計算処理等の繰り返し作業は、アプリケーションを用いて自動化することもできます。
対面会議をオンライン会議へ
会議室で対面にて行っていた会議を、オンライン会議に移行するのもデジタイゼーションの一種と言えます。
ZoomやGoogle Chatなどのアプリケーションを使えば、オンライン会議を簡単にスタートできます。
オンライン会議なら遠隔地からの参加も可能になります。
オンライン会議は、リモートワークの実現には必須の取り組みと言えるでしょう。
教科書を電子書籍化する
教育現場では教科書を電子書籍化するデジタイゼーションの動きも見られます。
教科書がすべて電子書籍化すれば、学校にはタブレットを1つ持っていくだけで済みます。
教科書が重すぎる、学校や家に教科書を忘れてきたという問題も起きにくくなるでしょう。
営業資料をタブレットで持ち歩く
紙からデジタルの営業資料に転換し、資料を丸ごとタブレットで持ち運べるようにするのもデジタイゼーションです。
こうすれば必要な資料をタブレット上からすぐに取り出せ、顧客に提示できます。
営業資料をデジタル化すれば、膨大な資料を持ち歩く労力は必要ありません。
デジタライゼーションとは
デジタライゼーション(Digitalization)は、業務全体の仕組みをデジタル技術によって作り変えることです。
経済産業省の資料中で、デジタライゼーションは次のように書かれています。
「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」
一方、国連開発機構(UNDP)は、デジタライゼーションを次のように定義しています。
Defined in the development context, it is the process of using digital
(technology, tools, processes, solutions) for greater operational impact, as well as for the
internal transformation of an organization
「開発の文脈において、より大きな運用上の影響や社内組織の変革の為にデジタル(の技術、ツール、作業、解決策)を用いるプロセスのこと」と訳せます。
2つの定義のニュアンスはやや違いますが、まとめるとデジタライゼーションは業務上のプロセス全体をデジタル化する試みと言えます。
デジタライゼーションの事例
デジタライゼーションの事例を2つ確認していきましょう。
POSレジで販売~在庫管理までをデジタライゼーション
小売業では商品がどれだけ販売されたかを集計し、それを見て人間が売れる商品を分析したり在庫を確認したりするというのが従来の形でした。
販売集計や在庫管理をパソコンで行ったとしても、それぞれの業務はバラバラなので時間がかかります。
しかし、POSレジは商品を販売した時点で、販売データを集計・分析します。
販売の集計から売上分析、在庫管理までの「プロセス」を一括でデジタル処理できるので、販売という業務が大幅に変化するでしょう。
工場の製造工程を全てモニタリングする
多くの製造現場では、ロボットが活躍しています。
しかし、物を製造する工程はいくつかに分かれています。
工程ごとにロボットを割り当てているだけでは、全体像が把握できません。
そこで、製造工程を一括でモニタリングできるようにデジタライゼーションします。
製造現場のデータは、基盤システムや生産管理システムとも共有していきます。
製造業務をデジタライゼーションすれば、製造物のリアルタイムな状態を把握したり、現状に合った価格設定を実現できるようになります。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いはデジタル化をする範囲の違いと言えます。
デジタイゼーションは業務上使っていた物理的なデータをデジタル化するだけです。
紙の資料をパソコンで作るなど、いわばツールのデジタル化です。
一方、デジタライゼーションは個別のツールではなく業務全体をデジタル化することを表現しています。
デジタル技術を使って業務内容全体を変える、プロセスのデジタル化と言えるでしょう。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いは曖昧
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いはデジタル化の範囲であるといいましたが、各デジタル化用語の解釈は使う人によって若干のばらつきがあります。
例えば、RPA(Robotic Process Automation)というロボットによる業務自動化を表現した言葉があります。
同じ作業を繰り返すタイプの業務にはRPAが利用できます。
RPAについてはデジタイゼーションと捉える人も、デジタライゼーションと捉える人もいます。
これらと同様にデジタル化やIT化、DXなどでも違いが曖昧であったり同義語として扱われる部分があったりと、確固たる違いを持って扱われにくいという面があるとは言えるかもしれません。
DXのためのプロセスがデジタイゼーションとデジタライゼーション
DXは、Digital Transformationの略語で、デジタイゼーションとデジタライゼーションと同じくデジタル化を表現した言葉です。
3つの用語は、「デジタル化をする範囲が異なる」と捉えると分かりやすいです。
デジタイゼーションはツールのデジタル化、デジタライゼーションはプロセスのデジタル化、そしてDXはビジネスモデルのデジタル化です。
DXはビジネスモデルをデジタル化することで、既定の価値観をガラッと変えてしまうようなインパクトを持ちます。
3つの用語の中で、最も規模の大きなデジタル化と言えるでしょう。
なおデジタル化の流れは決まっていませんが、
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- DX
と進めるのが一般的です。
アナログな手段を用いていた企業が、いきなりDX化するのは難しいです。
まずは、デジタイゼーションやデジタライゼーションから始めると良いでしょう。
デジタイゼーションとデジタライゼーションの違いを理解しよう
DXの必要性が高まってきていますが、まずはデジタイゼーションとデジタライゼーションの違いを理解し、身近なところからデジタル化を進めていきましょう。
例えば、まずは紙の資料をデータ化し、オンラインストレージに保存してみるのはどうでしょうか。
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