ICTを活用した競争力強化や業務効率化には、社員のICTスキルが欠かせません。
しかし、ICTスキルとは具体的にどのようなスキルなのか、説明できないという方もいるでしょう。
会社の成長と発展のために、ICTスキルを身につける方法や、ICTスキルを身につけている状態とはどのような状態なのかについて考えてみましょう。
ICTスキルとは
ICTスキルとは、ICTを活用するスキルのことです。
ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)は介護や教育の分野で活躍しており、離れた場所から高齢者を見守るシステムや、タブレットを利用したオンライン授業などをイメージするとわかりやすいでしょう。
IT(情報技術)を介しておこなう通信を活かして、どのように仕事や生活の利便性を向上させるかを考えられる能力、実行できる能力がICTスキルであるといえます。
ICTスキルとITスキルとの違い
ICTスキルと似た言葉にITスキルがあります。
ITスキルは、IT(情報技術)そのものに関するスキルをさし、PCやタブレットなどのハード、業務改善システムや通信販売サイトなどのソフトを使いこなすスキルで、プログラミングもこれに該当します。
一方、ICTスキルは情報技術を“活用する力”に着目したスキルです。
ICTを活用しどのように生活を豊かにするか、どのように業務をスムーズに進めるか、どのように顧客の利便性を向上させるかという点が問われます。
ICTでできることを理解し、仕事や生活の中にある課題を整理して、ICTでできることをあてはめることで、課題解決に導くスキルとも考えられるでしょう。
ICTスキルが必要な理由
ICTスキルとはなにかを理解したところで、「あったほうがいい能力だけどうちの会社にはなくても問題ない」と考える方もいるかもしれません。
企業にICTスキルが必要な理由について確認していきましょう。
競争力強化に不可欠
ICTはIT業界や介護・医療の分野だけではなく、すでにいろいろな業界で活用され、顧客の多くもその利便性に触れています。
今後も世の中にICTが広がり続けていくことを考えると、そのなかで企業の競争力を強化するためには、自社でもいずれICTを活用することは避けられないでしょう。
ただ単にICTを導入するだけでなく、自社が抱える課題の解決や成長にどう活かすのかを考え実行する力がないと、競争力の強化には結びつきません。
業務効率化に大きく役立つ
ICTは、データの収集や共有、自動入出力や自動計算、離れた距離にいる相手とのコミュニ―ションなど、業務に関わる多くの場面で役立ちます。
これらの機能を有効活用することで、従来と比較して大幅な業務効率化を実現することもできます。
ただし、ICTにより業務効率化を図る過程でも、ただ導入するのではなく自社の業務にあわせた最適な活用方法を考えることが重要です。
多様な働き方や人手不足への対応
少子高齢化による働き手の減少や、多様化する労働者のニーズに対応するためには、ICTによる業務効率化や、時間と場所にとらわれない働き方の実現が不可欠です。
従来通りの業務の形や働き方を続けていれば、離職者の増加や人手不足により業務が立ち行かなくなることが考えられます。
変化する社会のあり方に柔軟に対応するためにも、ICTを活用するスキルが欠かせないのです。
ICTスキルを身につけている状態とは?
具体的にどのようなことができれば「ICTスキルを身につけている」といえるのかを考えてみましょう。
文部科学省と総務省が公表している資料では、ICTスキルについて以下の点に着目しています。
ICTを使った操作・表現・情報収集ができる
文部科学省が発表している「学びのイノベーション事業実証研究報告書」では、児童生徒がICTを操作・活用するための能力の調査をおこなっており、その調査項目として以下をあげています。
児童・生徒のICT活用スキルに関する43項目
「a必須操作」3項目、「b表現(文章)」2項目、「c表現(図・絵)」2項目、「d表現(表・グラフ)」5項目、「e表現(静止画・動画)」4項目、「f表現(発表用資料)」3項目、「gファイル管理」5項目、「h文部科学省の学習者用デジタル教材の活用」9項目、「i情報収集」5項目、「j協働学習ツール」5項目
文章や図、静止画や動画が作れるか、情報収集ができるかなどの項目だけでなく、それらを目的に合わせて活用できるか、自分が伝えたいことの表現ができるかなどを問う項目もあり、ICTをコミュニケーションに活かす力を重視していることがわかります。
データの収集・蓄積・分析・利活用ができる
総務省のホームページでは、「ICTスキル総合習得プログラム」を公開しています。
プログラムを構成する4つのコースは、それぞれデータ収集・データ蓄積・データ分析・データ利活用を学ぶ内容になっており、この4つがICTスキルを構成する重要なポイントであることがわかります。
これらのことから考えると、ICTを活用してデータの収集から利活用までおこなうことができ、表現やコミュニケーションに役立てられる状態であれば、ICTスキルを身につけている状態といえるでしょう。
ICTスキルを身につける方法
社員がICTスキルを身につけるためには、会社として対策をおこなう必要があります。
代表的な4つの方法を紹介します。
ICTを導入する
まずは社員がICTに触れる機会を作るため、ICTを導入しましょう。
どの部署のどの業務に取り入れるのか、どのデバイスやソフトを取り入れるのか、適したものをしっかり考えたうえで導入する必要があります。
急進的に取り入れるとICTに慣れない社員から拒否反応が出ることも考えられるため、説明やヒアリングの機会を設けながら徐々に進めるとよいでしょう。
社員向けICT研修を実施する
ICTスキルや知識を向上させたい場合は、社員に向けたICT研修を実施しましょう。
総務省の「ICTスキル総合習得プログラム」やインターネットでみつけられる情報を参考に、ITリテラシーやICT活用事例、ビジネスマナーやSNSの利用についてまで広く学べるカリキュラムを考えます。
ICTスキルに詳しい社員が社内にいない場合や、ICTに関する基本的な知識をしっかり教える自信がない場合は、外部のサービスを利用するという方法もあります。
ICT関連の資格取得を支援する
業務に関わる資格についての教材購入費や受験料を助成したり、合格した際に報奨金を支給したりしている会社なら、対象となる資格にICT関連のものも含めるべきです。
ITパスポートや情報検定、ICTプロフィシエンシー検定などがICT関連の資格としてあげられます。
資格取得支援は社員がICTについて学ぶきっかけ作りとしてやモチベーション向上としても役立つでしょう。
目標を設定し他社の事例を学ぶ
他社のICT活用事例を学ぶことは、ICTの知識を深め具体的な活用方法を考える上で欠かせません。
ただし漠然と他社の成功事例を見ているだけでは、社内でのICT活用に結びつかなったり、他社のマネをするだけで終わってしまったりする可能性があります。
ICTを活用して実現したい自社の姿や、解決したい課題について考え、目標を設定したうえで学ぶとよいでしょう。
ICTスキルを習得して会社の競争力を高めよう
ICTスキルとは、ICTを活用する技術的な能力のことです。
企業が将来を見据えた競争力強化や業務効率化を図る際は、ICTを使った表現やコミュニケーション、データの収集・蓄積・分析・利活用ができることが求められます。
社員個人のこれまでの経験や知識に頼らず、会社全体でICTスキルを習得するためには、ICT研修の実施や資格取得支援をすることが効果的です。
ICTスキルを習得して課題解決や目標の実現に活かし、会社の競争力を高められるよう、できることから取り組みをおこなっていきましょう。