業務効率の向上や多様な働き方の実現のために、IT化やDXを目指す企業も多いことでしょう。
また、デジタル化の動きは社会的にも広まっており推奨されてもいます。
しかし、デジタル化に対応しようとする企業にとって大きな壁となるのが、デジタルデバイドの問題です。
デジタルデバイドの問題内容や発生原因を整理し、企業が知っておくべきデジタルデバイド問題のリスクについて確認していきましょう。
なぜデジタルデバイドは問題となるのか
デジタルデバイド(デジタル・ディバイド)とは、
「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者の間に生じる格差」です。
平成16年版情報通信白書用語集より引用
多くの情報がインターネットを通じて発信されてる中で、十分に情報機器を扱えなければ、必要な情報が手に入らない可能性が高くなります。
デジタルデバイドによって、情報を手に入れづらい人たちを情報弱者と呼ぶこともあります。
また、インターネットやPCの利用に慣れていない人たちは、仕事を効率化するための便利なデジタルツールを利用する事も難しいでしょう。
仮にインターネットを使える環境に置かれたとしても、機器の操作に不慣れな場合は、ミスやトラブルを引き起こしてしまったり、巻き込まれてしまう可能性も高くなります。
このようにデジタルデバイドは仕事の生産性を低下させるうえ、情報セキュリティリスクを高めてしまうという問題点があり、改善や対応が必須な問題です。
デジタルデバイドの問題が発生する原因
デジタルデバイドは様々な原因から発生する可能性がある問題です。
デジタルデバイドの問題が発生する原因について確認していきましょう。
世代間格差による影響
2020年度より小学校でプログラミング教育が必修化されたように、現代の子どもたちは義務教育の段階からデジタル機器の扱い方を学んでいます。
生まれたときからスマートフォンやタブレットに囲まれていた世代は、情報通信機器を当たり前のように使いこなしています。
しかし、一方で若いころはパソコンすら身近になかったという中高年の場合は知識がない場合もあるでしょう。
世代によってデジタル機器に触れる頻度や情報通信機の扱い方を学ぶ機会には大きな差があり、この差がデジタルデバイドを生じさせる原因となります。
地域間格差による影響
インターネットを十分に使える環境を整えるには、インフラを整備する必要があります。
しかし、人口が少ない地域にインフラを整備しても、都市部に比べて収益性が見込めません。
するとインフラを整備する企業は、地域への進出を抑え都市部に集中して投資を行おうとします。
インフラが整備されていない、環境があまり良くない地域では利用者自体も少なくなるでしょうし、インターネットを便利と感じられずに苦手意識を持ってしまうこともあるかもしれません。
このような都市部と地方でのインフラの格差が、そのまま都市部に住む人間と地方に住む人間のデジタルデバイドにつながっていくのです。
限定的な情報通信機器の使用
表面的にのみ情報通信機器を使用していることから、デジタルデバイドが生じる場合もあります。
例えば、普段スマートフォンしか使わない場合、パソコンの操作技術は身につきません。
また、SNSや口コミサイトを利用して自分の気に入る情報のみを集めている人にもデジタルデバイド問題は生じやすくなります。
これらの人々は、公的なホームページや信頼のおけるニュースサイトからではなく顔の見えない第三者からの情報のみを信じてしまう傾向があります。
すると、情報通信機器を使っているにもかかわらず正しい情報を得られない情報弱者になってしまう可能性があるのです。
いわゆるネットリテラシーの低さなどもデジタルデバイドを生む原因といえるでしょう。
業務環境の違い
プログラマーはもちろん、経理や事務職もパソコンを扱う機会は多いことでしょう。
普段からデジタル機器を扱う業務を続けていれば、自然とITスキルは高まっていきます。
しかし、デジタル機器を扱う機会があまりない業務についていれば、プライベートで意識的に学ばない限りITスキルは身につきにくいものです。
昔はパソコンを使わずとも成り立つ職業も多かったので、仮にITスキルがなくとも生活や仕事に支障はありませんでした。
ところが最近では、さまざまな業務にデジタル機器が利用されています。
現代では、デジタルデバイドの問題は仕事をする上で非常に大きくなっているといえるでしょう。
デジタルデバイドの問題で生じるリスク
デジタルデバイド問題が起こると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
企業内のデジタルデバイドによって生じる恐れのあるリスクについて解説します。
情報セキュリティ対策に穴ができやすい
ITリテラシーが低いと、情報セキュリティ対策を徹底するのは難しくなります。
例えば、「パスワードを使いまわさない」というのはITスキルが高い人にとっては常識かもしれません。
しかし、デジタル機器になじみがない人は、初歩的なセキュリティ対策すら疎かになってしまう可能性があります。
例えば社内のデータベースへのパスワードに、プライベートで使うサービスのパスワードと同じものを設定してしまうかもしれません。
ただ単に使用するスキルの差という部分だけでなく、ITリテラシーの格差によるデジタルデバイドの影響範囲には注意しなければいけないでしょう。
トラブルに巻き込まれやすくなる
インターネット関連の様々な犯罪が起こっています。
情報通信機器の扱いに不慣れな人は、このような犯罪に対してどう対処すべきか分からないでしょう。
もっといえば、犯罪ということにも気が付かない場合もあるかもしれません。
ITリテラシーが低ければ、フィッシングや架空請求などの詐欺の格好のターゲットにもなりやすく、トラブルに巻き込まれるリスクが高まります。
また、騙されたことになかなか気づけない、気が付いたとしてもどうしてよいのか分からないので事後対処も遅れてしまいます。
情報漏えいのリスクやウイルス感染などを引き起こしてしまえば、業務への影響だけでなく、企業の信頼の低下やトラブルに発展する恐れがあるのでデジタルデバイドの問題はリスクが高いといえるでしょう。
特定の個人に業務が集中する
従業員間にデジタルデバイドが生じていると、ITスキルの高い特定の個人に業務が集中してしまう可能性があります。
これでは一部従業員の負担だけが重くなりますし、その従業員が休んでいる間は業務が進まなくなってしまいます。
チェックする人間が少なければ、ヒューマンエラーから情報セキュリティ対策に穴ができてしまうこともあるでしょう。
さらに問題なのは、IT担当の従業員が不正を犯してしまうパターンです。
例えば、情報セキュリティ担当者がひとりしかいないとしましょう。
すると、もしその人が機密情報データをライバル会社に売ったり、取締役のメールを盗み見たりしていても、気づける人は誰もいないことになります。
知識がない人間が引き起こすリスクだけでなく、ひとりだけ知識がある人がいる場合にも起こり得るリスクがあることにも注意しなければいけません。
業務が効率化できない
デジタル技術を使えば、様々な業務が効率化できるでしょう。
データの詳細な分析ができるソフトを使えば、企業利益をどう増やしていくか戦略を立てやすくなります。
また、チャットツールやオンラインストレージを導入すれば、テレワークを推進しやすくなります。
しかし、ITリテラシーの低い職場では、デジタル技術を導入してもうまく使いこなせないという結果になる可能性が高くなります。
デジタル機器を活用して業務が効率化できなければ、コストの無駄にもなりますし、業績に影響する恐れもあります。
IT人材の流出・獲得困難
デジタルデバイドが広がっている企業は、IT人材を流出させてしまう可能性があります。
デジタル化社会において、高いITスキルを持っている人材は貴重です。
その技術に対し好待遇を約束する企業が現れれば、人材は簡単に流出してしまうでしょう。
また、デジタルデバイドが広がっている企業では、リモートワークやリモート面接といった新しい働き方をすぐ取り入れることができません。
古い考えや体質のままで居続ければ、柔軟な業務スタイルを求めているIT人材を獲得することはできないでしょうし、よりよい環境を求めて人材が流出してしまうのも当然の結果といえるでしょう。
最新の情報が手に入らない
デジタルデバイドの大きな問題は、最新の情報が手に入りづらくなることです。
インターネットを利用したリアルタイムな情報の獲得や共有は当たり前となってきていますが、デジタルデバイドが起きているのであれば、情報を手に入れられていない人がいるということです。
企業内で得るべき情報や確認が必要なことなどが漏れてしまう恐れや、迅速な発信や共有ができないというのは情報社会において後れを取っているといえるでしょう。
グローバル化しづらい
デジタル技術は、ローコストで世界進出を狙える大きな武器です。
海外に支店がなくともネットショップを介せば、世界中に市場を拡大できます。
多くのユーザーを抱えるSNSを利用すれば、海外への広報活動も容易です。
しかし、デジタルデバイドの問題点を抱えている企業はこれらのサービスを適切に使いこなすことは難しいでしょう。
現在は様々な分野でデジタル化が進み、各国が情報技術の発展に力を注いでいる状態です。
ITリテラシーの低い企業を多く抱える国は、グローバル化しづらくなり国際競争力も低下するでしょう。
デジタルデバイドの問題点を解決しないでいる影響
多くのリスクや問題があるデジタルデバイドの問題を放置しておくと、どのような影響があるのでしょうか。
デジタルデバイドの問題点を解決しない場合、予想される影響を見ていきましょう。
個人情報や企業機密漏えいリスクが高くなる
社内にデジタルデバイドが広がっていると、ITリテラシーの低い従業員から機密情報や個人情報が漏えいしてしまうかもしれません。
ネット上の悪意からどうやってデータを守るべきかというセキュリティ対策について良く知らない可能性があるからです。
また、一部の従業員のみが情報セキュリティ対策を行っている状態にも問題があります。
情報セキュリティ対策をしている従業員がエラーを起こす、不正を働く、辞めてしまうことになれば、企業全体に大きな影響を及ぼす結果になるからです。
企業の成長が見込めない
デジタルデバイドが広がっている企業では、業務の効率化ができません。
また、グローバル化の機会も失われるでしょう。
このような状態では、これからの企業の成長は見込めません。
デジタル化に対応したライバル他社との競争に負けてしまう可能性が高くなるでしょう。
IT人材の不足による悪影響
企業内でデジタル化を進めようとしても、そもそもそれに携われるIT人材が確保できない可能性があります。
一部の従業員にIT業務が集中すれば、負担は大きくなり、その従業員は退職してしまうかもしれません。
また、リモート面接や業務効率化ができない企業は、ITスキルが高い人材からは魅力的に見えないでしょう。
デジタルデバイドを放置すれば、デジタル化を計画してもIT人材を必要数確保できず頓挫してしまう危険性が出てくるのです。
デジタルデバイドの問題点を解消するには
デジタルデバイドの問題点を解消する主な方法は、情報弱者に対する教育の実施です。
これから企業を背負っていく若い世代への教育はもちろん、十分なIT教育を受けてこなかったシニア世代へのフォローも行っていくべきです。
動画やeラーニング教材の導入に加え、デジタル機器そのものに触れる機会を与えていくようにしましょう。
また、デジタル機器を使うことのメリットを伝え、学びたいという意欲を高めることも重要です。
企業のIT化を進めると、業務がどのように効率化できるのか、働き方が楽になるのかを明確にして企業全体で取り組んでいく必要があるでしょう。
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デジタルデバイドが広がると、様々な問題が発生します。
デジタルデバイドの問題点を知り、企業で解決策を考えていくようにしましょう。
デジタルデバイドの解消には、身近なデジタルツールの扱い方を教え、その利便性を従業員に知ってもらうとよいでしょう。
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