1.【比較表】クラウドとオンプレミスの違いとは?
企業にとって気になるクラウドとオンプレミスそれぞれの特徴を、表にまとめました。
クラウド | オンプレミス | |
初期費用 | 安い | 高い |
カスタマイズの柔軟性 | 自由度が低い | 自由度が高い |
セキュリティ | 強化されつつある | 強い |
導入スピード | 速い | 遅い |
障害対応 | ベンダーに任せられる | 自社で行う |
クラウドのメリット
サーバーを設置する必要がなく、保守やアップデートをベンダーに任せることができるのがクラウドのメリットです。そのため情報システムを専門的に扱う社員がいない企業でも、ファイル共有など目的に合わせたサービスを活用することができます。
インターネットを介して利用するため、紙のコスト削減につながるのも長所です。例えばクラウドストレージでは、印刷、郵送などの手段で共有していた資料を、ダウンロード専用URLを生成し相手にメール送信するだけで共有することが可能になります。ファイル共有の操作は簡単ですが、閲覧制限やパスワードの設定を行うことで、紙媒体よりも安全な情報管理を実現できます。
外部に接続するため「情報漏えいが不安」というイメージがあるかもしれませんが、実際は自力でシステムを構築するよりもセキュリティの脅威に対処しやすいのが特徴です。脆弱性を悪用する標的型攻撃や、内部での不適切なデータ利用による情報漏えいは、ファイアウォールなど「水際」を強化するだけでは対応が難しいのが現実です。信頼できるデータセンターがあり、高い技術力を持つ企業が運営するクラウドサービスを選べば、自社では対策が難しい分野でも、セキュリティ強化が可能です。
オンプレミスのメリット
オンプレミス型のシステムでは、通常社外に接続しないプライベートネットワーク(閉じているネットワーク)が構築されるため、不正な侵入をされにくく安全性が高いのが特徴です。
また、企業内で要件定義や構築が行われるため、他社のサービスに依存せず、業務に適した仕組みを自由に決めることができます。システム構築のノウハウが要求されるということでもあり、人材や資金に余裕のある大企業に向いている方法ともいえるでしょう。
クラウド移行のメリットとは
クラウド、オンプレミスそれぞれの特徴があるため、どちらを利用してもあまり大きな違いがないのでは、と感じられるかもしれません。しかしクラウド移行には、ネットワーク越しに利用するサービスならではの利点があります。
老朽化・陳腐化の心配がない
クラウドでは常にアップデートされた最新のサービスを利用できるため、ハードの装置やソフトウェアなどの最新版を買い直す必要がありません。また、何年か前には想定されていなかったような新たなセキュリティの脅威にも、システムを刷新することなく(サービスを利用することで)対応することができます。
設備の老朽化の心配もないため大規模な設備投資が不要で、費用は一定の月額利用料や、使用量に応じた料金(従量課金)のみで済みます。
災害対策になる
重要なデータや書類を紛失しないことはもちろん、非常時の事業継続性を高めることも企業にとっては大切です。自然災害や火災などで建物に被害が出てしまうと、紙の書類を安全に保つことは難しくなります。原本を保管しつつ、クラウド上にもデータをアップロードしておくことで、重要な書類がなくなってしまうリスクを軽減できます。
また、仕事に必要な資料をクラウドに保管しておくことで、災害により会社に行けない場合でも自宅勤務などが可能になり、業務をストップさせずに済みます。非常時に限らず、交通機関が運休する悪天候時には在宅勤務に切り替えられる体制をつくるといった効率化にも役立ちます。
2.クラウド移行時に押さえておきたい課題
紙媒体などで慣習的に資料の共有をしていたり、会社にサーバーを設置して既存システムを運用しているといった場合、クラウドに移行したり、併用することでメリットを享受し業務改善につなげることができます。原本以外にもクラウド上でデータを保管することには、リスク分散の効果も。
移行してから業務に支障が出ないよう、移行時に必ずチェックしたいポイントを紹介します。
基幹系システム
在庫・顧客管理や勤怠申請関連など、日々の業務に直接関わる基幹系システムを移行する場合には、業務が停止しないよう特に注意が必要です。
既存のシステムの要件とクラウドの機能が合致していることを確認し、企業活動が停止しないよう予備の回線なども用意したうえで、十分なテストを行って移行することが大切です。
コスト
既存のシステムとクラウドを比較して、クラウドに移行した場合どの程度のコストを削減できるのかについて精度の高い試算を行いましょう。
サービスの利用料金だけではなく、消耗品などの諸経費や人件費、ネットワークの維持にかかっていた費用などを算出することでコスト削減の効果を予測することができます。クラウドサービスも複数の見積もりを比較し、コストパフォーマンスに優れたシステムを選ぶようにしましょう。
セキュリティ対策
クラウド移行に伴い機密性の高いデータの移行も必要になるため、セキュリティレベルの高いサービスを選ぶことは必須です。
契約書や個人情報、企業秘密のデータを保管して問題ないセキュリティが施されているか、しっかり確認しましょう。政府機関などが利用しているようなデータセンター環境であれば、企業の情報管理においても十分に安全を確保できます。
サービスの継続性
クラウドサービスは他社のサーバーなどを利用するため、企業によっては事業が継続せず、サービスが停止してしまう可能性がゼロとはいえません。長期的に事業を継続できるであろう企業が運営しているクラウドサービスを利用しましょう。
3.クラウド移行の手順
クラウドに移行するには、適切な手順を踏み、安全に移行する必要があります。クラウド移行の流れについて解説します。
計画
プロジェクトを立ち上げ、担当者を配置してクラウド移行への計画を立てます。予算編成や既存のシステムの情報確認など、新サービス導入に必要な資料を整理し、半年や1年といった具体的な期間を決めていきます。
仕様検討・調達
クラウド導入後の仕様を具体的に検討し、既存のシステムと併用するか、完全に移行するかを決めます。既存システムを撤廃する場合には、データ損失が発生しないよう移行期間後もアクセスできるバックアップを用意するといいでしょう。
システム上の仕様が定まったら、調達仕様書を作成します。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)などで調達仕様書のひな形が公開されており、参考にすることができます。
導入・移行
システム設計が完了したら、テスト導入を行い、問題がなければデータを移行して本番環境での運用をスタートします。データ移行にあたり古い資料や重複して保存されていた書類などを削除し、整理・体系化しておくことも重要です。
運用開始後は、定期的にユーザー(従業員)の意見をヒアリングするなどして業務フローの改善点がないか、サービスのプラン変更の必要がないかといった確認を行いましょう。
4.クラウド移行のメリットを生かそう
コスト削減やリスク分散など、クラウドサービスを利用することによるメリットは多くあります。十分な効果を得るためには、慎重で安全なシステム移行を実施することが不可欠です。しっかりと計画を立て、クラウドならではのメリットを生かしましょう。