政府や企業におけるデジタル化はますます進んでいます。
しかし、中には「デジタル化の流れがきているから」という理由で明確なデジタル化の目的を持たずに進めている企業もいるかもしれません。
デジタル化の推進の必要性が高まるなか、デジタル化の目的とは何か、なぜデジタル化の目的が必要なのかについて改めて考えていきましょう。
デジタル化の目的とは?
一般的にデジタル化の目的として挙げられるのは、デジタル社会における競争力の強化です。
つまり、デジタル化が急速に進んでいる現代において、遅れることなくデジタル化に取り組み、国際社会や業界内での地位を向上する手段としてデジタル化が使われています。
政府においては、より広い視点でデジタル化の目的が定められています。
デジタル庁によると、デジタル化の目的は以下のとおりです。
社会全体のデジタル化は、国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データを最大限活用しながら、安全・安心を前提とした「人に優しいデジタル化」であるべき
引用:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
民間企業では、デジタル化を通じて業務効率を高め、それによって売上や顧客満足度の向上、働き方の多様化を目指すなど、より具体的なデジタル化の目的が定められています。
なぜデジタル化に目的が必要なのか?
なぜデジタル化に目的が必要なのでしょうか。
デジタル化の目的が必要とされる理由について深く考えたことのある人は少ないでしょう。
デジタル化の目的が必要な理由、デジタル化の目的がない場合に起きる問題について解説します。
目的がなければデジタル化を進められないから
デジタル化とは、何かを達成したり実現したりするための手段です。
達成したい「何か」の部分が決まっていないと、まるでゴールのないマラソンを走っているかのように意味のない取り組みとなってしまいます。
ビジネスにおいても、ゴールや目的を決めずに走り出す企業はいないでしょう。
デジタル化においても、実現したいゴール、つまり目的を決めなければ意味のある取り組みとはいえません。
むしろ、目的なくデジタル化を進めている場合、コストや時間の無駄になってしまう可能性があります。
デジタル化の目的は、デジタル化の取り組みを始める前に決めておくべきことです。
流行に合わせてデジタル化に取り組んでいるだけで、明確な目的が定まっていない企業は「何のためにデジタル化に取り組むのか」という点を再考すべきでしょう。
目的と手段が逆転しないようにするため
デジタル化は目的を達成するための手段です。
しかし、急速にデジタル化が進む現代においては、周囲におくれを取るまいとデジタル化に取り組むことが目的になっている企業も多くなっています。
これでは、目的と手段が逆転してしまい、本来のデジタル化の目的が見えなくなります。
目的と手段が逆転した状態では、「競合が〇〇を導入していたから」「〇〇はデジタル化に有効なツールだから」などという理由で、さまざまなデジタル化の施策を実行しますが、デジタル化の目的が欠けているため十分な効果は得られません。
結局、目的と手段が逆転したままデジタル化に取り組んでも、コストや時間の無駄になったり、効果が十分に得られなかったりします。
デジタル化の目的として考えられる例
デジタル化の目的として考えられるデジタル化の効果やメリットの例を紹介します。
デジタル化の効果やメリットを再認識するとともに、何を実現するためにデジタル化をおこなうのかを考えるきっかけにしてみてください。
コスト削減
コスト削減のためにデジタル化に取り組む企業は多いでしょう。
例えば、ペーパーレス化に取り組んで印刷代や書類の保管費用を削減したり、オンラインストレージやビジネスチャットなどのツールを活用して書類を共有し、郵送費用を削減したりできます。
デジタルツールの活用によって業務効率化が進んだりテレワークが活発になったりすれば、残業代や交通費の削減といった効果もあります。
売上アップ
デジタル化には売上アップに繋がるというメリットがあります。
例えば、店舗販売のみであった企業が通信販売に取り組んだり、ビデオ会議システムによって遠方のクライアントとも取引できるようになったりと、販路を広げる取り組みなどがデジタル化による売上アップの例として考えられます。
また、デジタルツールによって得たデータを分析して、効果的なマーケティングを実施することも売上アップに貢献するでしょう。
業務効率化
デジタル化は業務効率化にも効果的です。
アナログな方法でやっていた仕事をデジタル化することで、従来かかっていた時間を大幅に削減できます。
例えば、勤怠ツールの導入によってタイムカードの集計が不要になったり、ビジネスチャットの導入によってコミュニケーションの速度が上がったりするのがデジタル化による業務効率化の例です。
デジタル化によって業務効率が向上することで、残業代などのコスト削減や売上アップなどほかのメリットにも繋がっていきます。
業務効率化は、デジタル化に取り組む最大の目的になりうるといっても過言ではないでしょう。
顧客満足度の向上
デジタル化に取り組むことで顧客満足度の向上にも役立ちます。
例えば、データ分析によって顧客のニーズに沿った商品やサービスを開発したり、デジタルツールの活用によって問い合わせなどの顧客からの要望にいち早く応えたりできます。
アナログな業務方法をデジタル化することでミスを削減できる効果もあるため、顧客に不快な思いをさせたりクレームを受けたりする可能性も下がり、マイナスな印象を与えないという意味でも顧客満足度の向上につながるでしょう。
優秀な人材の確保
デジタル化は、人材の確保においても効果的です。
デジタル化が進んでいる企業では、業務効率がよくワークライフバランスが実現できるほか、テレワークなどの多様な働き方にも対応できます。
そのため、時間や場所にとらわれずに働きたい人や、育児や介護などで時短勤務を余儀なくされている人の流出を防ぐことに繋がるのです。
また、ワークライフバランスや多様な働き方が実現できる企業は求職者にとっても魅力的ですので、優秀な人材の確保に役立つでしょう。
デジタル化の目的を見失わずに進めるためのポイント
デジタル化においては、目的を明確にした上で目的と手段が逆転しないことが大切です。
目的を見失わずにデジタル化を進めるためのポイントをお伝えします。
経営層がリードして進める
デジタル化の推進は、経営層がリードしていく必要があります。
なぜなら、デジタル化の推進には「会社をどうしていきたいか」というビジョンが欠かせないからです。
つまり、経営層が考える会社の方向性が、そのままデジタル化の目的に繋がります。
「何を実現するためにデジタル化を推進するのか」という部分が経営層によってしっかりと考えられていれば、デジタル化の目的を見失ったり、目的と手段が逆転したりするような事態は起こらないでしょう。
デジタル化推進のチームを作る
目的を見失わずにデジタル化を推進していくには、デジタル化推進の専門チームを作ることをおすすめします。
専門チームを設けずにデジタル化の推進を各部署に任せた場合、普段の業務に加えてデジタル化に取り組むことになるため業務量が増大し、かえってデジタル化の取り組みが業務効率を下げてしまう可能性も否めません。
現在、DXやデジタル化に成功している企業の多くが、デジタル化専門のチームを設けてデジタル化に取り組んでいます。
適切なデジタルツールを選ぶ
デジタル化の目的を見据えたデジタルツールを選定することも非常に大切です。
例えば、多機能なツールであっても目的達成に不要な機能が多い場合、コストを圧迫する可能性があります。
機能や導入数の多さだけに着目するのではなく、自社が定めた目的達成に必要かどうかという視点を忘れないようにしましょう。
デジタル化の目的から逆算して進めよう
デジタル化は目的を達成するための手段です。適切なデジタル化の効果を得るためにも、デジタル化の目的を明確にする必要があります。
まずは、経営層が主体となって「何を達成・実現するためにデジタル化に取り組むのか」を考えましょう。
その後、目的から逆算して目的達成に必要な手順や組織体制を考えていくのです。
「みんなデジタル化に取り組んでいるから」「デジタル化は必須だと聞いたから」という理由でデジタル化に取り組んでいる企業は、ぜひデジタル化の目的を再考してみてください。