日々の業務で利用するパソコンや業務システムのデータは、常に消失のリスクと隣り合わせです。
IT化が進んだ現代では、データが消えると業務が止まってしまう、という企業も少なくないでしょう。
データ消失のリスクに備える「バックアップ」について、必要性からバックアップ用ストレージのメリット・デメリット、使い分け方などを解説します。
ストレージのバックアップをとる必要性
「バックアップ」とは、データの消失に備えて、別の媒体に複製をとっておくことです。
企業が業務に用いるストレージには、社員情報、経理情報、取引情報などさまざまな重要データが保存されています。
重要なデータを失えば、業務の停滞による業績悪化や、それに伴う信用の低下など、影響は計り知れません。
バックアップが適切に取得できていれば、データを復旧し、業務への影響を抑えることが可能です。
バックアップが必要になるデータの消失はどのような場合に起こるのかを4つの例で解説します。
システム障害対策
システム障害はソフトウェアやハードウェアの不具合で起こります。
ソフトウェアの不具合はプログラムミスや設計不良、ハードウェアの不具合は高負荷や部品の経年劣化など、さまざまな原因で起こりうる事象です。
ソフトウェア開発時のテストや、ハードウェアの冗長化などによって発生確率を減らすことはできますが、完全になくすことはできません。
システム障害に備えて、定期的にバックアップを取得しておくことが大切です。
サイバー攻撃・ウイルス感染対策
サイバー攻撃やウイルス感染によるデータ消失や不正更新の可能性に備えることも重要です。
例えば、次のような被害事例が挙げられます。
- ランサムウェアに感染してデータを暗号化されてアクセスできなくなる
- 悪意ある第三者の不正アクセスによってWebページが改ざんされる
もしバックアップを取得していなければ、元の状態に復旧するのに多大な時間とコストがかかり、業務に影響を与えることでしょう。
ヒューマンエラー対策
データ消失や誤更新は、人の作業ミスによっても起こり得ます。
人が作業するうえで、ミスを100%なくすことはできません。
重要なプロジェクト資料が入ったフォルダを操作ミスで丸ごと削除してしまう、何日もかけて作ったプレゼン資料を誤って消してしまうなんてことも起こる可能性があります。
しかし、定期的にバックアップをとっていれば、その時点の状態から復旧が可能です。
災害対策(BCP)
地震や水害などの自然災害や、テロなどによってオフィスやデータセンターが被災し、データが消失するリスクもあります。
発生確率は低くても、発生した場合には全てのデータが失われるなど甚大な被害を想定しなくてはなりません。
災害のケースでは、同じサーバ上やデータセンター内にバックアップを保管していると、一緒に消失する可能性が高いでしょう。
災害対策を目的としたバックアップは、元のデータとは物理的に離れた遠隔地に保管する必要があります。
バックアップ用のストレージとして使えるもの
バックアップは、元のデータが記録されている記憶媒体とは別の媒体に保管するのが基本です。
同じ媒体に保管すると、ハードウェア故障やウイルス感染の際に、バックアップも一緒に被害にあい、バックアップの意味をなさなくなってしまいます。
バックアップ用のストレージとして使える記憶媒体を紹介します。
外部記憶媒体
外部記憶媒体とは、DVDやUSBメモリ、外付けハードディスクなど、パソコンやサーバに内蔵されていない記憶媒体のことです。
安価で手軽に入手・利用できるDVDやUSBメモリは、パソコンやモバイル端末のデータバックアップに適しています。
一方、大容量で重要なデータを持つ企業システムのデータバックアップには、大容量テープやハードディスクなどが良いでしょう。
NAS
NAS(ナス)とは「Network Attached Storage」の略で、ネットワークに接続された記憶装置のことです。
複数のハードディスクで大容量化し、ネットワークで接続されたパソコンやサーバーのデータを保管することができます。
また、複数のハードディスクを組み合わせてRAID(レイド)という構成をとることで、冗長性を高めたり、読み書きの高速化を図ったりすることが可能です。
オンラインストレージ(クラウドバックアップ)
インターネットを介して、クラウド事業者が提供するストレージにバックアップする方法もあります。
iCloudやGoogleドライブなどに、プライベートのパソコンやスマホのデータをバックアップしている人も多いのではないでしょうか。
企業向けには、バックアップに特化したクラウドサービスも存在しています。
バックアップを外部記憶媒体にとるメリットとデメリット
各バックアップ用ストレージのメリットとデメリットを見ていきましょう。
最初は、DVDやUSBメモリ、外付けハードディスクなどの外部記憶媒体です。
外部記憶媒体のメリット
外部記憶媒体にバックアップを取得する主なメリットは次のとおりです。
- DVDやUSBメモリなどの記憶メディアは安価で手軽に入手・利用が可能
- 手軽に持ち運びができて利便性が高い
- 大容量テープやハードディスクは1TBなど大容量にも対応可能
小容量で身近なメディアから、大容量の企業向け記憶媒体まで、用途に合わせたものを選べます。
外部記憶媒体のデメリット
一方で、外部記憶媒体でのバックアップには次のようなデメリットもあります。
- 安価で手軽なDVDやUSBメモリでは大容量データのバックアップはできない
- 簡単に持ち出せてしまうため、紛失や盗難を防止するための管理が必要
- 傷や接触不良などによって記録したデータが読み取れなくなる可能性あり
安価で持ち運びの利便性が高い反面、紛失や破損によるバックアップデータの消失には十分に注意が必要です。
バックアップをNASにとるメリットとデメリット
次に、NASでバックアップを取得するメリットとデメリットを紹介します。
NASのメリット
NASにバックアップを取得する主なメリットは次のとおりです。
- 複数のハードディスクを組み合わせることで、大容量で冗長性の高いストレージの構築が可能
- 自社のデータ量や要件に応じて、カスタマイズが可能
- ネットワーク上の複数のシステムでデータを利用する、共有ストレージとしても活用できる
自社のニーズに合わせた容量、機能、セキュリティ要件で構築・運用できるのが魅力といえます。
NASのデメリット
一方、NASには次のようなデメリットがあります。
- 導入・運用にネットワークなどの専門知識を持った要員が必要
- 災害や機器の故障でデータが消失する可能性がある
- データ量の急激な増加や減少に柔軟に対応するのが難しい
- ネットワークを介してウイルス感染し、他の端末に感染を広げるリスクがある
自社で安全かつ安定的に運用するには、構築後にも維持保守のコストがかかることを理解しましょう。
バックアップをオンラインストレージにとるメリット・デメリット
最後に、オンラインストレージにバックアップを取得する方法のメリットとデメリットを見てみましょう。
オンラインストレージのメリット
オンラインストレージの主なメリットは次のとおりです。
- 自社で機器購入や環境構築の必要がないため、導入時の初期費用を低く抑えられる
- データ量の増加や減少に対して柔軟に対応が可能
- 自社でバックアップ機器の保守・運用が不要なため、社員の負荷や人件費が軽減
- 自社環境と切り離されているため、自社のウイルス感染や被災の影響を回避できる
無料プランや無料トライアルが可能なサービスも多いので、気になる場合は、まずはお試ししてみるのも良いでしょう。
オンラインストレージのデメリット
一方、オンラインストレージには次のようなデメリットもあります。
- 保管するデータ量に応じた月額利用料がかかり続けるため、自社構築の方がトータルコストが抑えられるケースもある
- インターネットを介して他社にデータを預けるため、セキュリティ面の懸念がある
- 通信環境が悪いと、バックアップや復旧に時間がかかったり、バックアップができなかったりする可能性がある
クラウド事業者によって料金プランや機能、セキュリティ対策がさまざまなので、用途や預けるデータの重要度に合致したサービスを選ぶことが大切です。
バックアップ用ストレージの使い分け
「外部記憶媒体」「NAS」「オンラインストレージ」は、どのように使い分ければ良いでしょうか。
それぞれ、どのようなケースでの利用に向いているかを解説します。
外部記憶媒体でのバックアップが向くケース
DVDやUSBメモリといった安価で小容量な記憶媒体は、パソコンやモバイル端末などの一部のデータをバックアップするのに向いています。
安価で手軽な一方、故障や紛失などのリスクも高いため、業務上重要なデータや個人情報などの保存は控えた方が良いでしょう。
重要なデータをバックアップする場合には、複数の媒体に保管するなどの対策をおすすめします。
外部記憶媒体の中でも、大容量テープは、大容量で耐久性も高いため、重要情報などを含む企業システムのバックアップ媒体としても利用可能です。
NASでのバックアップが向くケース
NASは、大容量のストレージに複数のサーバーやパソコンなどを接続できるため、一箇所にまとめてバックアップを取得するのに適しています。
また、自社ネットワーク内にバックアップを取得するので、顧客情報や機密情報などの重要なデータ保管の安全性も高いといえます。
LANや専用線で接続するため、バックアップの取得や復旧に時間的な余裕がないシステムでも安定した運用が可能です。
オンラインストレージでのバックアップが向くケース
オンラインストレージは、インターネットを介して外部のクラウド事業者にデータを預けるサービスであるため、情報流出のリスクと隣り合わせです。
従って、顧客情報や機密情報など、絶対に流出してはいけないデータの保管には向きません。それ以外のデータのバックアップ先として利用するのがおすすめです。
遠隔地のデータセンターを選べるサービスであれば、災害対策用のバックアップとしても有効です。
また、社内にバックアップ環境を構築・運用できるノウハウがない場合には、バックアップのプロであるクラウド事業者に任せるのも良いでしょう。
ストレージのバックアップにもセキュアSAMBA
システム障害やサイバー攻撃などに備えたストレージのバックアップは、企業の大切な情報を守るうえで欠かせません。
ストレージのバックアップ取得先には、外部記憶媒体、NAS、オンラインストレージなどがあります。
各バックアップ先のメリット・デメリットや使い分けを参考に、バックアップの取得目的に合わせて適した方法をお選びください。
オンラインバックアップをご検討の場合には、無料からはじめられて、セキュリティ対策も万全な国産オンラインストレージ「セキュアSAMBA」を利用してみてください。
多くの中小企業に利用されている、ビジネス向けオンラインストレージ「セキュアSAMBA」で安全なデータ管理を始めてみてはいかがでしょうか。