業務のデジタル化が進む中で、デジタルデバイド(デジタル・ディバイド)の話題を耳にする機会も増えてきているでしょう。
デジタルデバイドが広がると、DXやBCPの遅れだけでなく、日常業務における従業員同士の格差や所得の格差などさまざまな問題が大きくなると考えられます。
デジタルデバイドとは何か、デジタルデバイドの例を元に、企業ができるデジタルデバイド対策を考えていきましょう。
デジタルデバイド(情報格差)とは?
デジタルデバイド(デジタル・ディバイド)とは、スマートフォンやインターネットなどの情報通信技術を利用できる人と利用できない人の間に生じる格差のことです。
デジタルデバイドの状態は「国内間(企業規模・地域)」「個人・集団間」「国際間」の4種類に分けられます。
それぞれのデジタルデバイドの状態を詳しく見ていきましょう。
国内間の企業規模によるデジタルデバイド
従業員数・資本金・IT担当を雇用できる環境であるかなど、企業規模の違いにより生じる情報格差です。
高い水準のサービスやツールを導入するには、コストが必要になったり正しい情報を持っている人材が必要になったりします。
企業規模により、デジタル環境や人材を整えるためにかけられるコストが異なるため、インフラや情報リテラシーに精通した人材の採用に差が出てしまいます。
よりよいサービスやツールを導入できれば、スムーズでセキュリティ効果の高いデジタル環境が整えられるのは明白ですが反面、コストがかけられず適切な情報を得られない企業は、企業成長に影響する可能性もあるでしょう。
国内間の地域ごとによるデジタルデバイド
同じ国内に住んでいても、都市部か地方かによる地域間に情報格差が生じます。
都市部では多くの種類からインターネット(ブロードバンド)を選択できますが、地方部では利用できないインターネット回線もあります。
また、地方ではデジタル環境について相談できる店舗なども多くありません。
デジタル環境の情報が入りづらく情報格差となり、各家庭で検討や導入が進まないのです。
PCやスマートフォンなどで受けられるサービスやポイント還元などもあるため、生活の豊かさや家計の水準などにも影響すると考えられます。
個人・集団間によるデジタルデバイド
受けてきた教育や年齢・収入・身体的条件などから発生するのが、個人・集団間による情報格差です。
収入や教育環境は各家庭により異なるため、デジタル機器の購入状況・デジタル関連の知識の多さにも差が出ます。
また、高齢者は若い年代の人に比べてデジタルに馴染みの浅い場合が多く、必然的に格差となりやすいでしょう。
地域ごとのデジタルデバイドのように、PCやスマートフォンでのサービスが受けづらく、金銭的な還元も受けられない状況になると考えられます。
国際間によるデジタルデバイド
国単位の情報格差は、インフラ状況やデジタル教育の差などから発生します。
国としてのインフラ整備や教育状況は、国家予算が関係する場合がほとんどです。
そのため、発展途上国か先進国かが原因になりやすい情報格差だといえます。
国際間のデジタルデバイドは、労働や教育・観光・政治の面にも影響を及ぼすと考えられ、国全体の豊かさに関わる大きな問題です。
どのような状況下のデジタルデバイドでも、放置することで経済や社会の問題につながる可能性が懸念されます。
デジタルデバイドに対する政府の取り組み
政府が2021年に発足したデジタル庁では、デジタルデバイドを社会的な問題として取り扱っています。
デジタルデバイド政策として「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」を掲げ、デジタル推進委員の活動をおこなうようになりました。
デジタル推進委員とは、デジタル社会の利便性を誰もが享受できる環境を作っていく活動の一環です。
令和4年度は予算1.3億円をかけ、デジタル機器やサービスに不慣れな方などを対象に、講習会などで利用や活用方法についてサポートをおこなう取り組みとなっています。
しかしながら、デジタルデバイドの解消にとって必要だとされる「わかりやすいサービスやアプリを開発し、取り残されていく人を導く」ことは、予算やエンジニア確保の問題から進んでいません。
デジタル推進委員の活動、デジタルに関する法案の作成に多く時間を割いている状態となっているため、根本的な環境改善は企業ごとの対策に委ねられている状態です。
デジタルデバイドが生まれる原因
国内間のデジタルデバイドが生まれる原因は「経済格差」「地域格差」「社会的格差」「知識格差」などが挙げられます。
これら4つの格差について、確認していきましょう。
貧富の問題による経済格差
各家庭や企業規模による経済的な格差により、デジタルデバイドが引き起こされます。
スマートフォンやインターネットなどのデジタル情報機器が揃っていないと、情報は享受できません。
しかし、デジタル端末の購入は数万円単位でお金がかかるうえ、Wi-Fiなどは毎月コストがかかり続けるため、経済的な余裕がないと取り入れられないでしょう。
インターネット利用者の割合を世帯年収別で調査した、総務省「通信利用動向調査」の結果では、世帯年収200万円未満の家庭は59%、1,000万円以上の世帯は93.1%の利用率です。
200~1,000万円の間の世帯でも、年収が上がるごとに利用率は上がっているため、経済環境が情報機器の導入に関係しているのは明らかです。
経済的な事情でデジタル情報機器を購入できない、インターネット環境のインフラ整備ができないことは、デジタルデバイドの大きな原因となります。
都市部と地方による地域格差
都市部か地方かという地域差によりデジタル環境に対する格差が生じ、デジタルデバイドの原因になります。
都市部ではさまざまな選択肢のあるインターネット環境ですが、地方に行くほど選択肢は狭まります。
総務省の「通信利用動向調査」内、都道府県別インターネット利用率を見てみると、関東(1都6県)のインターネット利用率の平均は84.1%、一例として東北地方(6県)の利用率の平均は75.1%となっています。
地方に行くほど高齢者も増えるため、一概に地方だからといって利用率が低いとは言い切れませんが、約10%も利用率に差が出ている状態に鑑みると、地域格差が影響すると考えられます。
インターネットやブロードバンドが届くか否かというインフラ整備状況の違いや、デジタル機器を購入しやすい環境か否かなどの地域格差は、デジタルデバイドの原因となるでしょう。
高齢者・理解力の違いによる社会的格差
デジタルに馴染みの浅い高齢者や身体能力の差などの社会的格差から、デジタルデバイドが生まれます。
年齢別でスマートフォンの利用率を調査した総務省の「通信利用動向調査」では、30代をピークに利用率が下がり続ける結果となりました。
- 20代:89.9%
- 30代:91.7%
- 40代:88.2%
- 50代:83.9%
- 60代:70%
- 70代:40.6%
- 80歳以上:12.1%
また、高度に成長していくデジタル社会の中で、高齢者だけでなく同年代の中でもデジタル機器や情報を理解できる人とできない人が出てきているとも言われています。
情報リテラシーなどの知識格差
「情報を正しく判断して、得た情報から物事に活用できる基礎能力」を情報リテラシーと言い、個人間だけでなく企業間でも、情報リテラシーの差はデジタルデバイドの問題となり得ます。
得た情報を正しく理解できても活用できなければ、以下のような状況になる可能性が高まるのです。
- 個人:QRコードやネット予約などの使い方がわからないとスムーズな生活ができない
- 企業:デジタル・IT化ができず業務効率化やDX・BCPなどが進まない
正しい情報を得てもうまく活用できない、そもそもITに関わる情報の取捨選択ができないなどの情報リテラシー問題は、デジタルデバイドにとって悪影響になりうるでしょう。
デジタルデバイドの例や影響
どのような状態や出来事がデジタルデバイドによるものだと言えるのでしょうか。
ビジネスシーンに関係するデジタルデバイドの例を見ていきましょう。
デジタル経験が少ない世代の業務に支障をきたす
PCやスマートフォンが当たり前ではない世代が、デジタル化した業務についていけなくなる可能性があります。
業務効率化や情報漏洩の対策・DXなどの観点から、さまざまな業務をデジタル化する機会が増えてきました。
デジタル経験や知識の少ない世代にとって、以下のような内容は簡単に理解できるものではありません。
- 使い慣れないアプリを利用する
- 業務ごとにデジタル化の手順や内容が異なる
デジタル経験が少ない世代が業務についていけないことは、企業の成長の妨げになると考えられるでしょう。
提供しているサービスを顧客が使用できない
自社が提供しているサービスがデジタル機器に依存する内容である場合、顧客が理解できずに使用できない可能性があります。
- タブレットでの注文の仕方がわからず飲食店を利用できない
- キャッシュレス決済の方法がわからず商品を購入できない
- ネット予約ができず希望の店が利用できない
デジタルデバイドの影響で顧客がサービスを利用できないことは、企業にとって機会損失になる可能性が高まります。
やりとりに時間やお金がかかる
デジタル化をおこなうことのメリットとして、業務効率化やコスト削減が挙げられます。
裏を返せば、デジタルデバイドでデジタル化がスムーズに進まないと、やりとりや業務に時間やコストが余計にかかる結果になりやすいと言えるでしょう。
- 請求書を郵送するため時間も送料もかかる
- 契約書類などのやりとりのために直接会わなければならない
- ミーティング場所の確保や準備が必要になる
企業として業務効率化やコスト削減は大きな施策となるため、デジタルデバイドが企業全体によくない影響を及ぼしかねません。
所得格差が広がる
デジタル・ITの能力が求められる社会となってきているため、デジタルデバイドは所得格差の一因となる可能性があります。
職種によってはOffice系の操作ができることが前提となる場合や、デジタル知識の中でもより専門的な業務がおこなえる人は、企業に求められる人材として高く評価されやすい社会となりつつあるためです。
- デジタルの知見がないために企業内でもおこなえる業務の幅が狭まる
- 在宅ワークなどに移行したときに同じ職場を続けられない
デジタルに対する知見がある人ほど条件のよい仕事を見つけやすいだけでなく、企業の中でも所得の格差は広がると考えられるでしょう。
情報漏洩リスクが高まる
企業のさまざまな情報がデジタル環境に移行しているため、セキュリティ環境の強化は必須事項です。
しかしながら情報などのデジタル・IT化だけが先行している事例も多く、以下に挙げる状態では情報漏洩などのリスクが高まる結果が考えられるでしょう。
- デジタル化した情報にパスワードなどを設けていない
- 端末にある情報は誰でも閲覧できる権限がある
- そもそもデジタル化が進まず重要書類を紙で持ち歩いている
デジタルデバイドによりセキュリティ対策の知識がなかったり、デジタル化を進められず重要な情報を紙媒体で持ち歩いたりすることで、情報漏洩リスクにさらされやすくなるのです。
DXやBCP推進に遅れが生じる
デジタル環境を必須とするDXやBCPは、デジタルデバイドにより推進が遅れやすい状態となります。
デジタルデバイドでDXやBCPの推進ができないと、以下のような状況になりかねません。
- 業務の正確性や生産性が向上しづらい
- テレワークなどの働き方改革が実現しづらい
- 緊急時に事業の早期回復が見込みづらい
企業のDX化やBCP化を求められる、業務のデジタル化がより一層重要視されていく中で、社会に取り残される可能性が高まるでしょう。
デジタルデバイドの対策や取り組み
企業がおこなえる効果的なデジタルデバイドの対策には「デジタル情報機器の利用方法の認知」「IT人材の確保」「わかりやすいサービスの導入」があります。
デジタルデバイド対策や解消、改善に向けた具体的な取り組みを確認していきましょう。
デジタル関連の研修会を設ける
デジタルに馴染みの薄い高齢者やデジタルに苦手意識がある人に対して効果的な対策は、研修会を設けることです。
デジタル環境に馴染みがない方は、自ら勉強しようにも「何がわからないのかすらわからない」という状況も少なくありません。
企業として導入しているデジタルツール・ネットセキュリティなどの研修会をおこなうことは、人に教えてもらうことに意味があり、デジタルへの理解を深めるのに効果を発揮します。
また、研修会は、1対1で質問したり操作を進めていったりできる環境を整えられると、より一層デジタルデバイド問題の解消につなげやすいでしょう。
ITに強い人材を採用するため待遇を見直す
デジタルデバイド解消の取り組みとして、ITに強い人材を確保することは効果の高い方法だといえます。
企業ごとに適したシステムの構築だけでなく、ITに関する情報リテラシーが高い人材の育成も、デジタルデバイドにとって重要であるためです。
しかし、急激なデジタル化が進む一方でIT人材が足りていないといわれ、人材が確保できない問題は深刻化しています。
深刻化の背景にはIT人材の待遇が改善されていない状態が指摘されているため、待遇の見直しは効果的でしょう。
操作が簡単なひとつのツールにまとめてやりとり
デジタルデバイドの対策として効果的なのは、どのような層の人にもわかりやすいツールを取り入れることです。
操作が簡単かつ、可能な限り少ないツールにまとめて業務のやりとりをおこなうことで、複数の操作方法を覚えなくてよい環境が作れます。
さまざまな人材が、迷いなく業務をおこなえる環境を整えることは業務として大切です。業務効率化などの視点からもメリットがあります。
操作が簡単なひとつのツールにまとめてやりとりをすることで、デジタル環境に馴染みやすい状態を作りましょう。
デジタルデバイド解消にオンラインストレージ
デジタルデバイドの解消は、デジタル庁も政策として掲げるほど重要視している問題です。
内部格差や情報漏洩リスク・DXなどに遅れが出る可能性があるため、企業としても対策をおこなう必要があるでしょう。
研修やIT人材の採用と同時に、どのような層にとってもわかりやすい業務環境を整えることが、デジタルデバイド対策として有効です。
オンラインストレージの「セキュアSAMBA」は、シンプルな操作でデータやファイルの共有、情報共有がスムーズにおこなえるサービスです。
PCだけでなくスマートフォン・タブレットなどの端末でも操作可能なうえ、データやファイルの共有という難しくない部分のデジタル化という点で導入ハードルが低い点も利点です。
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