ITツールの普及やe-文書法や電子帳簿保存法の運用開始とともに、書類をデジタル化して保管する企業が増えています。
重要書類をPCへ保管する際に懸念されるのは、バックアップの必要性についてではないでしょうか。
バックアップの必要性やリスク、主なバックアップ方法からメリット・デメリットを解説します。
バックアップの必要性
企業が事業や業務をおこなうときには、データやシステム環境・アプリケーションなどが必要です。
データを保持しながら業務を進めるのが必須になることから、主に以下の3点が「企業がデータをバックアップする必要性のポイント」となります。
- データ消失に備えるため
- 災害時の事業継続に備えるため
- トラブル時の証拠データとして残しておくため
これらのポイントを軸に、企業がバックアップを用意する必要性について考えていきましょう。
データの消失に備えるため
データの保存を、PCやそのほかのデバイス自体におこなう企業も多いでしょう。
機器自体にデータを保存している場合、データが劣化することはなくてもデータが消える可能性はあります。
データ消失の要因として考えられるのは、以下のような状態です。
- 人為的なミス
- デバイス(PC・スマートフォンなど)の故障
- ウイルス・ハッキング
- 災害時
データ消失の要因は、思いもよらぬ外的要因や不注意から起こるものばかりです。
そのため、データ消失についての対策を完璧にほどこしたつもりでも、完全に守りきれるものではありません。
データが消失したときの対策として、バックアップは有効であり必要な対策だといえるでしょう。
災害時の事業継続に備えるため
自然災害が起これば、オフィスが被災する可能性があります。
PCやHDDなどの形があるものは壊れると考えられ、同時に機器内のデータが消失することは避けて通れません。
データとひとことであらわしても、以下のような内容があります。
- 業務に関するファイル
- システム環境の設定内容
- アプリケーション
被災により上記にかかわるデータが消えてしまえば、事業の復旧に時間がかかります。
事業継続が困難になる可能性も考えられるでしょう。
被災後も事業継続ができ、早期の事業復旧を目指すためにも、バックアップは必要です。
証拠データとして残しておくため
企業がバックアップをする理由に、証拠データとして残しておけることが挙げられます。
そもそもバックアップは上書きとは違い、以下の状態でデータを残しておく行為です。
- 保存元とは別の場所にデータを保管する
- バックアップしたときのデータ内容をそのまま残す
現在と過去のデータでどの部分が変わっているのかなどを見比べられるため、トラブル時に原因の分析が可能になります。
「作成中の資料内容が復旧できなくなった」「情報改ざんの可能性に直面した」などのトラブル時に証拠データを残しておけるバックアップは、企業にとって必要な対策といえるでしょう。
企業がバックアップの必要性を考慮しない場合のリスク
企業がバックアップをおこなわないと、業務が進められなくなることや社会的な信用問題に発展する可能性までも考えられます。
バックアップの必要性を考慮せず、バックアップをおこなわなかった場合のリスクを解説していきましょう。
データが消失しても復旧できない
バックアップしない直接的なリスクとして考えられるのは、データが消失しても復旧できない可能性が高まることです。
バックアップをしなければ、データがひとつしか手元にない状態であるのがほとんどでしょう。
中には重要なデータや取引先から受け取ったデータなどもあり、データを復旧できないことからトラブルに発展する事態も考えられます。
また、消えてしまったデータに「今まで収集した情報や分析した結果」などがある場合、作り直しは難しいことがほとんどです。
データが消失しても復旧できない状態は、企業の事業継続にとって大きなリスクとなるでしょう。
業務を進められない
バックアップを取らず消失したデータが復旧できなければ、業務に必要なデータが手元にない状態となってしまいます。
業務にかかわる情報の入ったデータがなければ、あたりまえですが仕事になりません。
事業を進められなければ、企業として成り立たないず存続が困難であることは明白です。
トラブル時に過去の情報を追えない
使用するシステムにより、データが上書きされると過去のデータには戻れないものがあります。
そういった場合は特に、バックアップをしないと過去と現在とでデータの見比べができません。
過去の情報が追えないと、以下のような状態を引き起こすと考えられます。
- 過去の情報をもちいて証明できない
- データを見比べられず原因究明できない
バックアップしないリスクとして、スムーズな問題解決になりづらいだけでなく、トラブルが大きくなる可能性もあるといえるでしょう。
信用問題に発展する可能性がある
企業が取りあつかうデータには、取引先から共有されたものや顧客情報が含まれている場合があります。
もともと他社が保有しているデータが消失してしまえば、新たなデータをもらわなければならなくなるでしょう。
「手違いでデータを削除してしまった」などが理由で、情報漏えいリスクはなかったとしても、先方には管理体制に疑問を感じさせる結果となります。
バックアップせずに業務を進めると、企業としての信用問題に発展するリスクを伴う可能性が考えられるでしょう。
e-文書法・電子帳簿保存法などの要件が満たせなくなる
e-文書法・電子帳簿保存法とは、今までは紙での保存が義務付けられていた書類について、電子データでの保存を容認するとした法律です。
それぞれ要件や対象となる書類は異なりますが、要件として書類の保存期間を定めています。
電子帳簿保存法にかかる要件として、国税庁は「帳簿書類等の保存期間」の中で以下のように明記しています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
(注1)「帳簿」には、例えば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。
(注2)「書類」には、例えば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
(注3)青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。
書類や内容によりますが、上記のとおり確定申告に関連する書類は7年間・9年間・10年間の保存が必要です。
さらに「電子帳簿保存法一問一答」の問18では、バックアップデータの保存は要件ではないと明記しつつも、以下のような対策を推奨しています。
電磁的記録は、記録の大量消滅に対する危険性が高く、経年変化等による記録状態の劣化等が生じるおそれがあることからすれば、保存期間中の可視性の確保という観点から、バックアップデータを保存することが望まれます。
引用:電子帳簿保存法一問一答
電子帳簿保存法では可視性の確保が要件となっており、要件を満たさない場合は「各税法上の保存書類としては取り扱われない」としているのです。
保存書類として取り扱われないと、企業にとって下記のリスクを生じる可能性があります。
- 仕入税額控除の否認
- 青色申告の承認取消し対象
e-文書法・電子帳簿保存法などの要件が満たせなくなる可能性があるのは、バックアップをしないリスクになりうるといえるでしょう。
バックアップの方法:外部媒体
外部媒体への保存は、バックアップ方法として有効な手段です。
外部媒体とは外部(外付け)の記憶メディアを指し、代表的なものに以下があります。
外部媒体の種類 | 特徴 |
USBメモリ | USBコネクターに接続し使用する記憶媒体を、USBメモリという。
短めのスティック型を基本として、キャップ付・回転式など製品によりUSB接続部を保護する形はさまざま。 |
メモリカード | 薄いカード型の記憶装置。SDカードやmicroSDカードなどの種類がある。
転送速度や容量は、製品によりさまざま。 |
HDD | Hard Disk Drive(ハード・ディスク・ドライブ)の略。
円盤型の磁気ディスクを内蔵した、記憶媒体を使用した記憶装置。 置き型の製品だけでなく、平たい箱のような形のポータブル製品もある。 |
SSD | Solid State Drive(ソリッド・ステート・ドライブ)の略。
内蔵されているメモリーチップにデータを書き込める記憶装置。 HDDとは違い円盤を使わないため、平たい箱のような形だけでなくスティック型もある。 |
これらのような外部媒体にバックアップする方法のメリットとデメリットを確認していきましょう。
外部媒体のメリット
外部媒体でバックアップする主なメリットは「手に入れやすく手軽にあつかえる」という状態が挙げられます。
厳密には外部媒体の種類により細かな特徴は異なり、それぞれ以下のようなメリットがあります。
USBメモリ | ・小型で持ち運びしやすい
・大容量の製品もある ・手に入りやすく手軽にあつかえる |
メモリカード(microSDカードやSDカード) | ・小型で持ち運びしやすい
・パソコンやカメラ、スマートフォンなどに使用でき汎用性が高い |
HDD | ・容量に対しての価格が安め
・大容量の製品がある |
SSD | ・衝撃に強い
・小型タイプは持ち運びも可能 |
外部媒体は、安価な製品もありネット購入もできるため入手しやすいです。
さらに持ち運びしやすいタイプも多く認知度も高いため、他者とのやりとりがスムーズにおこなえるところも大きなメリットだといえるでしょう。
外部媒体のデメリット
外部媒体は「物理的に形がある」・「持ち運びできるため小型なものが多い」という特徴から、バックアップするデメリットとして以下が考えられます。
- 衝撃が加わることでデータ消失の危険性がある
- 何度も書き換えすると劣化する
- 小型がゆえ運びやすさの一方で紛失しやすさにつながる
- 紛失から情報漏えいの危険性がある
外部媒体にも種類があるため、衝撃に強いタイプや紛失時に情報閲覧がしにくい製品もあります。
しかしながら形がある以上は、衝撃や紛失に対するデメリットは考慮せざるを得ないでしょう。
バックアップの方法:オンラインストレージ
オンラインストレージとは、オンライン上にデジタル化したデータを保管するサービスのことです。
「オンライン=インターネット上」にある「ストレージ=保管庫(デジタル的な意味としてはデータ記憶装置)」に、デジタル化した書類・画像などを保管できます。
似たような言葉でクラウドストレージがありますが、オンラインストレージもクラウドストレージも基本的に同じと考えて問題ありません。
オンラインストレージ・クラウドストレージのサービスを総称して「クラウドサービス」と呼ぶこともあります。
オンラインストレージのメリット・デメリットを確認していきましょう。
オンラインストレージのメリット
オンラインストレージの大きな特徴は「インターネット上にデータが保管できること」です。
以下が、オンラインストレージの主なメリットとなります。
- アクセスする場所や時間を問わない
- 他者と共有したい場合でも物理的に記憶媒体のやりとりが必要ない
- 社外にデータを置くことになるため被災の場合などにデータが守れる
また、利用するサービスにより、以下のようなメリットもあります。
- 自動バックアップ機能がある場合、バックアップし忘れを防げる
- バックアップの拠点が増やせる場合、災害対策に非常に有効である
- 操作ログが見られる場合、トラブル時の証拠になりやすい
- セキュリティ対策が強固な場合、万が一の情報漏えいに備えられる
バックアップの必要性として、データの消失時に復旧できる状態・災害時の事業継続・証拠データとして残せることだと解説しました。
上記をバックアップの必要性と考慮した場合は、オンラインストレージはメリットが多い方法だといえるでしょう。
オンラインストレージのデメリット
メリットが多いオンラインストレージですが、デメリットについても把握する必要があります。
インターネットに接続ができる環境があれば利用可能なオンラインストレージですが、外部企業がサービスとして運営している以上、以下のデメリットが考えられます。
- 社外にデータを保管するからこそ、セキュリティ面への懸念がある
- ランニングコストがかかる
- 障害が起こったとき自身では対応ができない
- 扱いが難しいと感じる場合がある
オンラインストレージはさまざまな企業がサービスとして運営しているため、これらのようなデメリットについての対策を明確にしているサービスを選ぶことが大切です。
バックアップの必要性を知り企業は適切にバックアップを用意しよう
企業にとってのバックアップの必要性は事業を運営、さらに被災後などでも早期の回復と継続させるための保険として、なくてはならない存在だといえます。
バックアップの方法を検討する際には、外部媒体・オンラインストレージがあり、どちらの方法でも異なるメリット・デメリットがあります。
運用しやすい方法を取り入れるのがスムーズですが、どちらの方法でもデメリットに対する施策を事前におこなうのが望ましいでしょう。
また、オンラインストレージに対して強いデメリットを感じないという場合、バックアップの必要性に対する施策を網羅できるオンラインストレージがおすすめです。
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