DXという言葉は曖昧で、なかなか具体的なイメージを持ちにくいものです。
これからDX戦略を立てたいが、何をするのがDXなのかよく分からないという場合も多いのではないでしょうか。
単にパソコンを使えばDXになるのか、DXをしてメリットがあるのか、疑問を持つ方もいるでしょう。
DXの身近な例やDXのわかりやすい例を参考にして、自社のDXをどのように推進すべきかイメージを具体化してみましょう。
DXとは何か
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。
簡単に言えば、デジタル化された社会のデータを使って新しいビジネスモデルを確立するための手段です。
ここで重要なのは、DXは目的ではなくあくまで手段であるということです。
DXの目的は、変化の激しい現代に適応した新しいビジネスモデルを創出することにあります。
しかし、DXは指し示す範囲が広く、明確な定義が難しい言葉でもあります。
「新しいビジネスモデル」といっても具体的なイメージが描けなければ、DXの先に目指すべき将来像も定まりません。
DXのイメージを具体化できるようなDXの身近な例やわかりやすい例を紹介します。
DXの身近な例
最初に、DXの身近な例を紹介します。
しかし、ここで紹介するのはDXそのものではありません。
DXを実現するには、段階があります。
いきなり新しいビジネスモデルを確立するのは難しいため、まずは身近な所からデジタル化していくのがDXの一般的な進め方です。
紹介する身近な例は、DXによるデジタル化の最初の一歩と言える部分になります。
Web会議で場所を問わない働き方を実現
従来会議といえば1つの部屋に参加メンバーが集まって、顔を合わせながら議論するものでした。
しかし、この方法では出張中のメンバーや遠隔地にいる業務委託会社の社員は会議に参加できません。
これを解決する身近な例が、ZoomやTeamsといったWeb会議ツールです。
Web会議ツールを使えば、どこからでも会議に参加できるので、場所を問わない働き方を実現できます。
他にも、Web会議には様々な利点があります。
例えば、会議室の収容人数に参加者数が制限されることはないですし、声だけの参加も可能です。
PC画面内の資料は印刷することもプロジェクターを用意することもなく、参加者全員に共有できます。
遠隔地にいる顧客に対し営業活動をする上でも、Web会議ツールは大きな力を発揮するでしょう。
ビジネス向けチャットツールの導入
業務上のコミュニケーションは、最新のデジタルツールを導入することで効率的になります。
以前より業務上のコミュニケーションは、メールという手段でデジタル化されていたかもしれません。
しかし、メールは宛先のアドレスを必要とするため、複数人で情報を共有したいときに非常に手間がかかりました。
さらに、宛先を間違えて機密情報が漏れてしまうという危険性も存在します。
このようなデメリットを補える身近な例が、Chatworkなどのビジネス向けチャットツールです。
ビジネス向けチャットツールでは、複数人が参加できるグループを作成し、その中でコンタクトを取れます。
一度グループを作ればその中でメッセージが送りあえるので、アドレス入力の手間が削減できます。
また、ファイル共有を行ったり、タスクを追加したりといった業務効率化につながる機能が利用できるのもメリットです。
帳簿をExcel化・マクロ化
売り上げ金額や在庫の管理を手書きの帳簿で行うのは、大変非効率的です。
1箇所に記帳ミスがあれば計算全てをやり直さなければなりませんし、データを追加する際に紙面が足りず困ることもあるでしょう。
細かい帳簿データはEXCELで管理すると、業務効率化につながります。
修正したデータは数式に自動で反映されるので、計算をやり直す必要はありません。
データの挿入や削除も簡単に行え、入力欄が足りなくなることはほぼありません。
細かいフィルター機能や関数が備わっているので、データを分析する際にも重宝です。
また、マクロと呼ばれる作業の自動化機能を使えば、定型的な作業を一瞬で終わらせることも可能になります。
書類保存はバインダーからクラウドストレージへ
業務上の書類を紙媒体で保存していると、保管方法が問題になってきます。
機密を含んだ書類は誰もが見れる場所に置いておくことはできません。
また、書類の分類方法も悩ましいものです。
バインダーに閉じる場合は、1つの基準でしか書類を整理できません。
例えば日付別に書類を分類して保管している場合は、顧客別の検索が困難になります。
これらの問題は、紙の書類をデジタル化しオンラインストレージに保存することで解決します。
オンラインストレージ上の書類は、関係のない第三者が内容を見たり改ざんしたりできないよう資料ごとにアクセス権限を設定できます。
さらに、様々な要素やキーワードで書類を検索できるようになります。
なおオンラインストレージに保管した書類は、複数の人間で同時編集を行えるというメリットもあります。
電子印鑑を活用して完全ペーパーレス化を図る
書類をデジタル化した後でも、ハンコを使った承認プロセスが残っている場合があります。
部長や課長の承認印が必要であるがために、わざわざ印刷をしなければならないのでは意味がありません。
承認の捺印をもらうためだけに、テレワーク中の社員が出社しなければならないという事態も発生するかもしれません。
そこで、使いたいのが電子印鑑です。
電子印鑑を使うと、デジタル化された書類そのものに捺印ができます。
どこからでも使えるため、出張中の上司から印鑑をもらいたいときも重宝です。
ただし悪用されるリスクもあるため、導入するなら企業向けの有料電子印鑑サービスを使うべきでしょう。
チャットボットを使った顧客対応
顧客対応といえば、人間のオペレーターが担当するものという常識が変化しつつあります。
人間のオペレーターには、稼働時間に限界があります。
24時間切れ間なく対応するには、膨大な人件費を割かなければなりません。
これを解決する身近な例が、チャットボットです。
チャットボットは、顧客が問い合わせ内容を選択するだけで自動で答えを返してくれます。
そしてプログラムでできたチャットボットは、時間に縛られずいつでも顧客に対応できます。
定型的な問い合わせはチャットボットに任せ、難しい質問だけオペレーターにつなぐというシステムにすれば、人的リソースを節約できるでしょう。
DXのわかりやすい例
DXに成功し、新しいビジネスモデルを創出したDXのわかりやすい例を見ていきましょう。
これらの事例は、現在では当たり前のように感じられるかもしれません。
しかし、ほんの少し前まではまったく想定されていないようなサービスでもありました。
デジタル化が旧来のビジネスモデルをどのように変化させたのか、確認していきましょう。
個人対個人の取引を仲立ちするCtoCビジネス
CtoCとは、Consumer to Consumerの略称で「個人対個人の取引」を意味します。
個人対個人の取引には、企業が間に入るよりも低価格で取引できるメリットがあります。
一方で取引の安全性が担保されなかったり、ふさわしい取引相手が見つからなかったりという問題点が目立っていました。
個人間で安全で確実な取引を行うのは、なかなか難しかったのです。
しかし、現代では、IT技術をもってこのような問題点をカバーするサービスが次々と登場しています。
わかりやすい例がフリマアプリの「メルカリ」です。
多くの人が利用する「メルカリ」では、スマートフォンを使った手軽な取引が魅力です。
「メルカリ」には膨大な種類の商品が取引されているので欲しいものを見つけやすくなります。
また、売れた商品の代金は一時的に「メルカリ」が預かり、商品の受け取り手続きがされた後に出品者に振り込まれます。
個人間取引にとって不安な「代金を払ったのに商品が届かない」という問題を未然に防ぐ取り組みです。
匿名配送のシステムを利用すれば、個人情報を隠したまま安全な取引ができます。
さらに取引者間での評価システムがあるので、トラブルの多い利用者を割り出すことができます。
顧客情報をおすすめ機能や在庫管理に反映するAmazon
かつては顧客が膨大な店の在庫から自分の好きな商品を選び、購入するのが一般的でした。
店舗の多くは長年の経験から仕入れを行っていましたが、予想が外れて在庫を抱えてしまうパターンも見られました。
しかし、顧客情報をデータ化し、分析することでこのようなビジネスモデルは変貌しつつあります。
わかりやすい例がAmazonの「おすすめ商品」機能です。
顧客の閲覧履歴や商品への評価をもとに「おすすめ商品」を表示する機能のことで、顧客は今まで知ることのなかった魅力的な商品と出会えます。
顧客が商品を探すのではなく、サービス自体が顧客に商品を提案する時代なのです。
また、顧客データを使えば、合理的な在庫管理ができるようになります。
例えば「世界一IT化された食堂」と呼ばれた老舗食堂ゑびやは、来客数をAIで予想し、食品廃棄ロスを70%以上削減することに成功しました。
セルフレジから無人店舗へのチェンジ
かつては当たり前だったスーパーやコンビニでレジに並び、レジ係に支払いを行うという光景が減りつつあります。
多くの店舗がセルフレジを導入し、人件費の削減を図っているからです。
セルフレジがあればレジ係は必要なくなり、その分の人員を他の業務に回すことが可能になります。
他人との接触が少ないセルフレジは、利用者にとって衛生面でのメリットもあります。
また、レジというシステム自体を無くす試みも始まっています。
イオンリテールはレジに並ばない買い物システム「レジゴー」を開発しました。
顧客は買い物をしながら専用スマホで商品をスキャン、最後に精算機にデータを送信するだけで支払いができます。
さらにわかりやすい例が、ローソンの無人店舗Lawson Goです。
Lawson Goでは、買い物をして店を出るだけで事前に登録していた決済手段で支払いが行われます。
レジ業務をシンプルにするという考え方から、レジ自体をなくす方向にビジネスモデルがチェンジしてきているのです。
サブスクリプションサービスの成功
人気のサブスクリプションサービスも、DXの分かりやすい例の1つです。
サブスクリプションは、料金を支払うことで一定期間サービスを利用できる仕組みです。
サービスを利用する必要がなくなれば解約すればいいという手軽さ、価格の安さが魅力です。
また、サービス提供元としては、長いスパンで収益が見込めたり、アップグレード製品に無理なく顧客を誘導できたりというメリットがあります。
かつてCDやDVDは購入するかレンタル店で個別に借りるのが一般的でした。
しかし、現在では多くの音楽や映画がサブスクリプションサービスを介し、聞き放題、見放題で楽しまれています。
キャッシュレス決済で顧客にも店舗にもメリットが
現金を使った取引というビジネスモデルをチェンジさせたわかりやすい例が、キャッシュレス決済です。
キャッシュレス決済は顧客にとって、現金を持ち歩かなくて済むというメリットがあります。
現金での支払いは、釣銭の間違いや小銭が多くなるなどのわずらわしさがありますが、キャッシュレス決済にはそのような問題がありません。
各種決済システムが持つポイントサービスによって、お得感もあります。
また、デジタル決済は無人店舗との相性も良く、店舗側では、人件費削減や売上管理の簡易化につながります。
DXの身近な例やわかりやすい例から見るDXのポイント
DXの身近な例やDXのわかりやすい例を参考にDXを成功させるためのポイントを紹介します。
DXそのものを目的としない
DXとは、新しいビジネスモデルを達成するための手段にすぎません。
業務の効率化とは関係なく、現在の問題が解決できないのなら無理にデジタル化を取り入れる必要はないのです。
デジタル化、DXそのものを目的としないようにしましょう。
ビジョンと中長期的な計画の設定
DXを実行する前に、中長期的な計画のもとに将来目指すべきビジョンを立てておきましょう。
業務の一部をデジタル化したことで満足し、DXの試みを終わらせてしまうのは望ましくありません。
DXは短期的に達成できるわけではなく、中長期的なスパンで継続的に行われるものであるという認識を持ちましょう。
外部視点を取り込む
DXを推進するためには外部IT人材との交流を通し、改革の気づきを得る事が重要です。
新しい観点からの指摘を取り入れることで、今までにない発想が生まれる可能性が高まるでしょう。
また、DXを実行する際、自社にふさわしい人材がいない場合はITコーディネーターなどの外部専門家を頼る事も検討しましょう。
デジタル化の過程では、外部の便利なツールを上手に活用してください。
身近なところから手を付ける
DXを始める際は、身近な所からデジタル化していくのがポイントです。
いきなり大規模なデジタル化を達成するのは難しく、失敗する危険性が高く、従業員も付いていけないでしょう。
しかし、手近な業務からデジタル化していけば、成功確率が高くなります。
成功を積み重ねることで、社内のITスキルが向上し、その積み重ねがDX推進の大きな力になります。
DXの身近な例やわかりやすい例を参考に進めよう
DXという言葉は、漠然と「デジタル化」ととらえられがちです。
しかし、DXの重要なポイントは「新しいビジネスモデルの創出」であり、これはただのデジタル化とは一線を画すものです。
DXを成功させるポイントは、まず身近な所からデジタル化を始めることです。
例えば、紙の書類をデジタル化するのもDXを推進させる第一歩になります。
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