テレワークや在宅勤務の普及に伴い、データ量や通信速度を意識する人が増えました。
どこにいても、パソコンやスマートフォンがインターネットにつながっていることが、もはや当然となっているため、通信速度が遅いだけで多くの不便を感じやすくなりました。
また、通信速度を上げることで普段の利用だけではなく、業務をするうえでも良い効果が期待できます。
快適にインターネットを利用するためにも、通信速度の改善・通信速度を早くする方法を把握しておきましょう。
通信速度を改善するためのポイント
まずは通信速度を早くする方法を確認する前に、通信速度を改善するためのポイントについて見ていきましょう。
まずは通信速度について知る
通信速度は、インターネット通信におけるデータの転送速度であり、bps(bit per second)という単位で表されます。
これは、1秒間に何bitのデータを送受信できるかを数値化したものであり、数値が大きいほど転送できるデータ量が多くなります。
仮に、100bpsであれば、1秒間に転送できるデータ量は100bitとなります。
また、1000bps=1Kbps、1000Kbps=1Mbpsのように単位が換算されます。
基本的に、データ量は「MB(メガバイト)」のようにbyteで表記されています。
1byte=8bitなので、1Mbpsの通信速度で転送できるデータ量は0.125MBとなります。
したがって、仮に5MBのデータを転送する際には、約40秒かかることになります。
通信速度を調べよう
契約しているインターネット回線で公表されている通信速度は、「ベストエフォート値」と呼ばれる「最大通信速度」であり、実際の通信速度ではありません。
快適にインターネット通信をしたい、大容量データを扱うことが多いのであれば、現在の通信速度を調べてみましょう。
通信速度を調べる方法は、主に以下の3つです。
- アプリ:「Speedtest」や「RBB SPEED TEST」など
- Webサイト:「SpeedCheck」や「USENスピードテスト」など
- Googleの検索窓に「スピードテスト」と入力する
現状の通信速度や必要な通信速度を把握することで改善する必要性も変わってきます。
目的に合った通信速度の目安を知ろう
現在の実測値がわかっても、インターネット通信をおこなう目的に沿った通信速度の目安がわからなければ改善が必要かどうかも判断できません。
そこで、利用目的別の通信速度の目安を確認しておきましょう。
- メール(テキストのみ):下り128Kbps~1Mbps
- Webサイトの閲覧:下り1Mbps~10Mbps
- 動画視聴:下り5~25Mbps
- オンライン会議:30~50Mbps
自分がどのように利用したいかを考えて通信速度の改善も考えていきましょう。
通信速度を上げる必要があると考えられるとき
通信速度を上げる必要があると考えられるときについて考えてみましょう。
必要に応じて通信速度を改善する幅も変わりますが、通信速度が現状では足りていないと考えられるときが改善の必要があるときともいえます。
スムーズに業務が進まないとき
メールに添付されたファイルが開けない、データのアップロードに時間がかかるなど、スムーズなインターネット通信ができないと、効率よく業務を進めることができません。
データ転送の際に、頻繁にエラーや多くの待ち時間が生じることで、業務が滞ってしまうのであれば、通信速度を上げる必要があります。
クラウドサービスを活用できないとき
オンラインストレージや勤怠管理などのクラウドサービスは、業務効率化を目的として、多くの企業に利用されています。
しかし、クラウドサービスはインターネット通信ができることが前提とされているため、通信速度が遅いと利用できません。
クラウドサービスにかかる費用を無駄にしないためには、通信速度を上げる必要があると考えられます。
ストレスを感じたとき
通信速度が遅いことで、業務が進まない、費用対効果を生み出せないなどのストレスを引き起こしてしまいます。
ストレスが蓄積すると、仕事に対する意欲や生産性が下がります。
社員ひとりの生産性が下がることは、チームや組織全体にも影響が出てしまう恐れもあります。
「通信速度が遅いから仕方がない」と、士気が下がらないうちに、通信速度を上げる必要があります。
通信速度を上げるメリット
通信速度を上げることで、もたらされるメリットについて考えてみましょう。
スピーディーに最新の情報が得られる
仕事における情報収集の多くの部分に、インターネット通信を利用しています。
通信速度を上げて、スピーディーに新しい情報やリアルタイムの情報を得られることは、仕事において有利にはたらきます。
また、オンラインストレージを利用していれば、複数人で共有したデータを、誰かが更新したとしても、ほかの人が同期した時点で、常にデータは最新の状態に保たれています。
メールを使ってデータの更新を伝える手間も省けるため、最新データにアクセスするまでのタイムラグを減らすこともできます。
このほかにも、Google検索で検索結果がすぐに表示されることで、今必要な回答をスピーディーに得られるというメリットもあります。
容量の大きいデータを扱える
通信速度を上げることで、大容量データをスムーズに扱えるというメリットがあります。
これまで通信速度が遅いことで、高画質な画像や動画、3D CADデータなど、大容量データの扱いに、時間がかかり歯がゆい思いをしていた人も多いでしょう。
通信速度を上げれば、1秒間に転送できるデータが多くなる=大容量サイズのデータ転送にかかる時間を短縮することができます。
また、特に速い通信速度が求められる複数人でのオンライン会議も、画像や音声が途切れることなく、円滑な会議やコミュニケーションが可能になります。
業務効率が上がる
通信速度の速さは、業務効率に直結しているといっても過言ではありません。
知りたい情報をスピーディーに得ることができる、大容量データの転送時間を短縮できるなどを実現できれば、大幅に業務効率が上がります。
また、通信速度に問題があることで、活用できていなかったクラウドサービスを、最大限に活用することで、より一層の業務効率化につながるでしょう。
ストレスフリーで仕事ができる
仕事に関わる業務でデジタル技術を使用する機会は増えています。
通信速度が上がることで、これまで億劫に感じていた業務のすべてが、サクサクと進められることを実感できるでしょう。
通信速度が上がれば、これまでクラウドサービスなどのデジタルツールに苦手意識を感じていた人も、その利便性を体感できることで、意欲的な活用へとつながるかもしれません。
通信速度に対して感じていたストレスがなくなることで、モチベーションや生産性アップも期待できます。
通信速度を早くする方法
具体的な通信速度を早くする方法を見ていきましょう。
無線ルーターを買い替える
インターネット回線の通信速度に問題がなくても、Wi-Fiルーターの規格が古いことで、通信速度を遅くしている可能性があります。
これまで主流だったWi-Fiルーターの最大通信速度は、600Mbps程度です。
一方で、最新のWi-Fiルーターの最大通信速度は、9.6Gbpsと約16倍の速さです。
せっかく通信速度の速いインターネット回線を契約していても、ルーターが対応していなければ、無線ルーターを経由することで通信速度が遅くなってしまいます。
無線ルーターの規格を確認して、現在の通信速度に対応していないのであれば、買い替えを検討してみましょう。
LANケーブルを買い直す
LANケーブルによる有線での接続は、外部からの影響を受けにくいこともあり、安定したインターネット通信ができます。
ただし、古いLANケーブルを使用している場合は、買い直す必要があります。その理由に、「LANケーブルの劣化」、または、「カテゴリが古い」ことが挙げられます。
まずは、LANケーブルの劣化から説明していきます。LANケーブルはねじれたり、湿気や日光など、外部からの影響により、数年や数ヶ月で劣化したりしてしまうこともあります。
次に、LANケーブルのカテゴリについて、LANケーブルには「CAT 5」「CAT 6A」のような数値が印字されています。
これは、LANケーブルの分類を表すもので「カテゴリ」と呼ばれ、最大通信速度や対応規格が異なります。
このカテゴリが5以下のもの(LANケーブル印字では「CAT 5」)は、最大通信速度が遅いため、新しいものに買い直すことで、通信速度を上げることができるでしょう。
ネット利用時間の変更
仕事を一斉に始める9時台や13時台、お昼休憩の12〜13時にかけては、インターネットを利用する人が多いため、通信速度が遅くなります。
これは、転送されるデータ量が一気に多くなりすぎることで、インターネット回線上に渋滞が発生するためです。
可能であれば、インターネット利用時間を変更することで、通信速度が速い環境を確保できるでしょう。
新しい通信規格を利用する
そもそものインターネット回線が遅ければ、Wi-FiルーターやLANケーブルを新しいものに買い替えたところで、通信速度を上げることはできません。
既存の電話回線を使用したADSL方式を利用しているのであれば、通信速度を速くするために光回線へと変更しましょう。
なお、ADSL方式は2023年にサービスが終了するため、早めに光回線へ切り替える必要があります。
また、インターネットで使う通信プロトコル(手順)の規格を新しくすることで、通信速度が速くなります。
「IPv4」「IPv6」といった表記は、このインターネットで使う通信プロトコルを表したものです。
次世代規格である「IPv6」は、「IPv4」に比べて通信速度が速いとされています。
しかし、実は「IPv6」の通信速度自体が速いのではなく、「IPv4」とは異なる接続方式を採用しているために、インターネット回線の混雑による影響を受けにくいのです。
わかりやすく例えるなら、インターネット回線という道路において、新たなバイパスが用意されているために、回線の混雑を避けることができ、安定した通信速度を確保できるのです。
ただし、「IPv6」に切り替えたからといって、必ずしも通信速度が速くなるのではなく、「IPv6」の接続方式に対応したプロバイダやルーター、パソコンを使用し、正しく設定する必要があります。
パソコンのスペックを見直す
古いパソコンを使用しているのであれば、パソコンのスペックを見直してみましょう。
無線Wi-Fiを使用する場合、ルーターからの電波を受けるパソコンとルーターの規格が一致していないと、対応している以上の通信速度を出すことはできません。
1、2年のあいだに購入したパソコンであれば、最新のWi-Fi規格である「Wi-Fi6」に対応しているケースが多いですが、それ以前のパソコンであれば、「Wi-Fi6」に対応していないことも考えられます。
カタログやWebサイトなどから、保有しているパソコンのスペックを調べることができるので、一度パソコンのスペックを見直してみましょう。
ルーターに対応したパソコンを使用することで、通信速度を早くできるかもしれません。
また、OSのアップデートをおこなうことで、通信速度が上がるケースもあります。
OSのアップデートでは、機能改善や不具合の修復をおこなってくれます。
その際、不具合が生じていた通信処理が修復されることで、通信速度の改善にもつながるかもしれません。
ルーターと端末の距離を近づける
Wi-Fiのルーターとパソコンの距離が遠い場合は、電波が届いてない可能性があります。
ルーターとパソコン、それぞれの位置で通信速度を調べて、ルーター付近より極端に数値が低いのであれば、ルーターとパソコンを近づけてみましょう。
また、金属や水はWi-Fiの電波を通しにくいという特徴があります。
そのため、ルーターをスチールデスクの裏や、水槽の向こう側に置いているのであれば、電波が通りやすい位置へと移動させることで、通信速度が改善されるかもしれません。
意外な盲点となるのが、自宅の1階にルーターを置いて、2階で作業をしているケースの床暖房です。
床暖房は金属を主な素材としているため、電波が遮断されやすいので、見落とさないようにしましょう。
通信速度の改善が業務効率の向上につながる
安定したインターネット環境が確保できていた出社時と比べ、テレワークなど、さまざまな通信環境で仕事をする人も増えました。
通信速度を早くすることで、インターネット回線を使った業務が、これまで以上にスムーズにこなせるようになります。
通信速度が遅いと感じている人はもちろん、現状の通信環境に満足している人も、さらに通信速度が上がることで、より効率的に作業を進めることができるでしょう。
快適で安定した通信速度へと改善することは、業務効率の向上につながることを強く認識しておきましょう。