メールの添付ファイルにパスワードをかけるのは危険?脱PPAPの必要性と代替手段を解説
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「メールの添付ファイルにパスワードをかける」という行為は、多くの企業で当たり前の慣習として根付いています。
しかしメール送付の際のPPAP方式は今や、ビジネスに深刻なリスクをもたらす危険な行為だと知っていますか?
本記事では、PPAPがなぜ危険なのか、政府が「脱PPAP」を推奨する背景をわかりやすく解説します。
さらに、中小企業のIT担当者が直面するファイル共有の課題を解決する、安全で効率的な代替手段を徹底比較。自社に最適なツールを見つけるヒントを具体的に紹介していきます。
そもそも「PPAP」とは?なぜ添付ファイルにパスワードをかけるのか
PPAP方式の仕組みと、日本で普及した背景
PPAP(ピーピーエーピー)とは、パスワード付きのZIPファイルをメールに添付し、そのパスワードを別のメールで送るファイル共有手法のことです。
この名称は、パスワード付きZIP(Password)、暗号化(Ancrypted)、添付(Attached)、プロトコル(Protocol)の頭文字から来ています。
PPAP方式が日本で広まった背景には、2000年代のインターネット黎明期におけるセキュリティ事情があります。
当時は、メールの盗聴リスクが懸念されており、ファイルを暗号化して送るこの手法は、安全性を確保するための有効な手段と考えられていました。
特別なツールを導入する必要がなく、手軽に誰でも使える点も普及を後押ししました。
また、誤ってファイルを間違った相手に送ってしまっても、パスワードを別に送ることで情報漏えいを防げるという「安心感」も、長年にわたりこの慣習が定着した大きな理由の一つです。
PPAPの運用が「非効率」と言われる2つの理由
PPAPは、情報セキュリティの問題だけでなく、日々の業務における非効率性も指摘されています。特に、以下の2つの理由が生産性を著しく低下させています。
1.送信者と受信者の双方に手間がかかる
送信側は、ファイルをZIP形式に圧縮し、パスワードを設定し、さらにパスワードと添付ファイルを別々のメールで送るという多くの手作業が必要です。
受信側も、パスワードを探して手動で入力し、ファイルを解凍する手間が発生します。たった1つのファイルを送るためだけに、これだけの工程が発生するのです。
2.ヒューマンエラーによるリスクが常に存在する
「パスワードとファイルを両方とも誤った宛先に送ってしまった」という経験はありませんか?
PPAPは、二重のメール送信を前提とするため、誤送信のリスクが倍増します。特に多忙な業務の中では、こうしたヒューマンエラーが情報漏えいにつながる危険性を常にはらんでいます。
PPAPが抱える「重大なセキュリティリスク」とは
長らく「安全な手法」だと信じられてきたPPAPですが、現代のセキュリティ基準から見ると、多くの深刻な問題点があります。
これらのリスクは、単なる不便さにとどまらず、企業のセキュリティ体制そのものを危険にさらします。
パスワード付き添付ファイルの3つの危険性
かつては有効とされたPPAP方式も、現代の高度なサイバー攻撃の前では、その脆弱性が次々と明らかになっています。
特に以下の3つの危険性は、PPAPを使い続ける上で見過ごせない問題です。
1.パスワードの解読が容易な「脆弱な暗号化」
PPAPで一般的に使われる「ZipCrypto」という暗号方式は、強度が非常に低いことで知られています。専用のパスワード解析ツールを使えば、パスワードの文字列によっては、ものの数分で解読されてしまいます。パスワードを別送したとしても、ファイル自体が持つセキュリティは極めて脆弱なのです。
2.ウイルスチェックをすり抜ける「マルウェア感染リスク」
これがPPAPの抱える最大のリスクかもしれません。パスワードで暗号化されたZIPファイルは、メール送受信時に動作するウイルス対策ソフトが中身をスキャンできません。これにより、悪意のある第三者は、マルウェアを仕込んだファイルを簡単に送りつけることができてしまいます。
近年、添付ファイル経由で感染を広げるマルウェア「Emotet(エモテット)」や「IcedID(アイスドアイディー)」が社会問題となりましたが、これらのマルウェアはPPAPの脆弱性を悪用することで、多くの企業に被害をもたらしました。PPAP方式は、いわばマルウェアの侵入経路を企業自らが作ってしまっている状態なのです。
ファイルとパスワードの「盗聴リスク」
PPAP方式では、ファイルとパスワードは別々のメールで送信されるものの、両方とも同じ通信経路(メールサーバー)を通ります。仮に、この通信経路が傍受された場合、ファイルとパスワードの両方が盗聴されてしまうリスクが残ります。PPAP方式が生まれた「盗聴対策」という目的は、もはや意味をなさなくなっているのです。
政府も廃止を推奨する「脱PPAP」の動き
なぜ今、PPAPは時代遅れになったのか
PPAP方式が抱えるセキュリティ上の問題は、企業個別の課題に留まらず、社会全体で認識され始めています。この流れに決定的な影響を与えたのが、政府機関による「脱PPAP」の表明です。
2020年11月、当時のデジタル改革担当大臣が、内閣府・内閣官房でPPAP方式を廃止する方針を公にしました。これは、PPAPがもはや時代に合わない古い手法であることを国が認めたことを意味します。この動きを皮切りに、多くの民間企業も追随し、PPAPに代わる安全な情報共有手段への移行を加速させています。
特に中小企業にとっては、こうした国の動きを無視することはできません。取引先との間でセキュリティ意識のギャップが生じれば、企業の信頼性低下につながる可能性もあります。「脱PPAP」は、もはや一時的な流行ではなく、企業が競争力を維持するための必須課題となっているのです。
「脱PPAP」を実現するための3つの代替手段
PPAPに代わる安全で効率的なファイル共有・転送方法には、いくつかの選択肢があります。ここでは、中小企業が導入しやすい3つの代替手段を紹介します。
1.クラウドストレージ
Google DriveやDropbox、OneDriveといったサービスが代表的です。ファイルをオンライン上に保存し、共有用のURLを発行して相手に送ることで、大容量ファイルを簡単に共有できます。高度なセキュリティ対策(データの暗号化、アクセス権限設定、ウイルススキャン機能、アクセスログ管理など)も備わっており、PPAPの課題を根本から解決できます。
2.添付ファイル自動分離・URL化サービス
メールに添付されたファイルを自動的に検知・分離し、ダウンロード用のURLに変換するサービスです。この方法では、ファイルがメールサーバーを経由しないため、ウイルスチェックが可能です。既存のメール環境を大きく変えずにセキュリティを向上させたい場合に有効です。
3.ビジネスチャットツール
SlackやMicrosoft Teamsのようなビジネスチャットツール上でファイルを共有する方法です。リアルタイムのコミュニケーションが可能で、グループ内でファイルを共有できるため、社内での共同作業を効率化できます。
添付ファイルの課題を解決する最適な手段は「クラウドストレージ」
PPAPの代替手段には様々なものがありますが、多くの企業が抱える「日常的なファイル共有とセキュリティの両立」という課題を解決する上で、最もバランスが取れているのがクラウドストレージです。
クラウドストレージが脱PPAPに有効な理由
クラウドストレージの導入は、PPAP方式が抱えるあらゆる問題を一気に解決してくれます。
マルウェアリスクの低減
アップロードされたファイルを自動でスキャンする機能を持つサービスが多く、マルウェアの感染リスクを大幅に下げます。
強固なセキュリティ
多くのクラウドストレージは、業界標準の強固な暗号化技術や二要素認証などを採用しており、情報漏えいのリスクを極めて低く抑えられます。
業務効率の向上
ファイル共有はURLを送るだけで完了。受信側もブラウザから簡単にアクセスできるため、圧縮やパスワード設定、解凍といった手間がなくなり、日々の業務がスムーズになります。
一元管理による安全性
誰が、いつ、どのファイルにアクセスしたかというログを管理できるため、不正なアクセスや情報漏えいが発生した際に、その原因を特定しやすくなります。
クラウドストレージの導入で実現できること
クラウドストレージは単にPPAPの代替手段に留まりません。導入することで、以下のようなメリットも得られます。
リモートワークへの対応
インターネット環境があれば、いつでもどこからでもファイルにアクセスできるため、多様な働き方に対応できます。
バージョン管理とデータ復元
ファイルの更新履歴が自動で保存されるため、誤って上書き保存した場合でも、以前のバージョンに戻すことが可能です。
ストレージ容量の節約
パソコンのローカルストレージではなく、クラウド上にファイルを保存するため、パソコンの容量を圧迫しません。
【比較】クラウドストレージ・ファイル転送サービスの選び方
クラウドストレージが優れているとはいえ、世の中には多くのサービスが存在します。「結局、どれを選べばいいの?」と迷う人も多いでしょう。
特に、IT専任者がいないことの多い中小企業がサービスを選ぶ際は、以下のポイントをチェックすることが重要です。
サービス選定でチェックすべき6つのポイント
中小企業がクラウドストレージを選ぶ際に重視すべきポイントをまとめました。
【ポイント1】料金体系
ユーザー数課金か、データ容量課金かを確認しましょう。社員数は多いが扱うデータは少ない企業は前者、少人数で大容量ファイルを扱う企業は後者が適しています。
【ポイント2】管理者機能
IT担当者が少ない場合、ユーザー管理やアクセス権限設定を簡単に行えるかどうかが重要です。
【ポイント3】セキュリティ機能
データの暗号化、二要素認証、アクセスログ機能は必須です。これらが標準機能として備わっているかを確認しましょう。
【ポイント4】サポート体制
トラブルが発生したときに、日本語でのサポートが充実しているか、対応時間(24時間365日など)はどうかといった点は、運用負担を大きく左右します。
【ポイント5】使いやすさ
直感的なインターフェースや、ドラッグ&ドロップでのファイルアップロードなど、従業員がスムーズに利用を開始できるかが定着の鍵となります。
【ポイント6】ファイル復元機能
万が一のデータ損失に備え、誤って削除したファイルや、上書き保存した過去のバージョンを復元できる機能があると安心です。
料金体系で見る!自社に合ったプランの選び方
料金体系はサービスによって様々です。自社の業務スタイルに合わせて最適なプランを選ぶことが、コストを抑えながら最大の効果を得るためのポイントです。
【比較表】主要な料金体系のメリット・デメリット
料金体系 | メリット | デメリット |
ユーザー数課金 | ユーザー数が増えてもデータ容量を気にせず使える。 | ユーザー数が多いほどコストが高くなる。 |
データ容量課金 | ユーザー数に関わらず利用でき、少数精鋭の組織向き。 | 容量が増えるごとにコストが上がる。 |
ユーザー数無制限・容量課金 | 従業員数が多い企業でもコストを抑えやすい。 | 容量を多く使う場合はコストが増える。 |
脱PPAPに繋がるおすすめクラウドストレージ3選
セキュアSAMBA
セキュアSAMBAは、株式会社kubellストレージが法人向けに提供している日本製のオンラインストレージです。
操作性、サポート体制、料金プラン、専門性に優れており、中小企業を中心に8,000社以上の導入実績があります。パソコンに専用のアプリを利用すれば、アプリから直接ファイルの編集や保存が可能です。
また、Webブラウザからアクセスする場合は、ドラッグ&ドロップで簡単に操作できます。モバイル端末にも対応しているので、専用のアプリをインストールすれば、外出先からもモバイル通信で安全かつ迅速にデータの受け取りが可能です。
導入前からの申し込み段階や導入後の運用などについて、専任の担当者がサポートするため、初心者でも安心して利用できます。
プラン名 | 料金タイプ | 月額料金 | ストレージ容量 | ID数 |
フリー | データ容量課金 | ¥0 | 1 GB | 2名 |
スタンダード | データ容量課金 | ¥25,000 | 300 GB | 無制限 |
ビジネス | データ容量課金 | ¥35,000 | 500 GB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥48,000 | 1 TB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥88,000 | 3 TB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥128,000 | 5 TB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥178,000 | 10 TB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥298,000 | 30 TB | 無制限 |
セキュアSAMBAの料金体系は、フリープラン以外はすべてID数無制限になっている点が特徴です。利用する人数が多くなるほど、料金の人数あたりの単価が安くなっていく仕組みとなっています。
また、エンタープライズプランでは容量にあわせてプランが細かく分かれており、必要な容量にあわせて適正な料金を選択できるようになっています。
Fireforce
Fileforceは、ファイルフォース株式会社が提供する日本製のオンラインストレージです。大企業を中心とした2,000社以上に導入実績があります。
社内のファイルサーバーと同じような感覚で利用できる「Fileforce Drive」や、オンライン編集や全文検索に対応している「Fileforce Web」など、さまざまなインターフェースが用意されています。
例えば「Fileforce Drive」ならば、エクスプローラーから使用できるため、パソコン上で既存の共有フォルダを扱う感覚でオンラインストレージを利用できます。新たに操作方法を覚える必要がなく、普段パソコンを使い慣れている人ならばすぐに馴染めるでしょう。
プラン名 | 料金タイプ | 月額料金 | ストレージ容量 | ID数 |
Small Business | ID課金 | ¥9,900/10ID | 100 GB/10ID | 10ID~ |
Unlimited-1 | データ容量課金 | ¥60,000 | 1 TB | 無制限 |
Unlimited-3 | データ容量課金 | ¥108,000 | 3 TB | 無制限 |
Unlimited-10 | データ容量課金 | ¥216,000 | 10 TB | 無制限 |
Unlimited-30 | データ容量課金 | ¥360,000 | 30 TB | 無制限 |
料金体系としては、ID課金とデータ容量課金の両方があり、ID課金であれば10ID以上から利用できます。
DirectCloud
DirectCloudは、株式会社ダイレクトクラウドが法人向けに提供する日本製のクラウドストレージサービスです。初期費用はかからず、利用可能人数は無制限で利用できるため、費用を抑えて導入できます。
DirectCloudへアップロードされたファイルは、「ウイルスチェック」「通信の暗号化」「保管時のデータ暗号化」などのセキュリティ対策が行われます。「デバイス認証」「IPアドレス制限」などのアクセス制御にも対応しており、セキュリティ体制が整っているサービスです。
また、「ユーザーID管理」や「ストレージ管理」など、ファイル共有管理者の業務負担を軽減する管理者機能も魅力的です。
プラン名 | 料金タイプ | 月額料金 | ストレージ容量 | ID数 |
スタンダード | データ容量課金 | ¥36,000 | 500 GB | 無制限 |
アドバンスド | データ容量課金 | ¥60,000 | 1 TB | 無制限 |
ビジネス | データ容量課金 | ¥108,000 | 4 TB | 無制限 |
プレミアム | データ容量課金 | ¥216,000 | 12 TB | 無制限 |
エンタープライズ | データ容量課金 | ¥360,000 | 35 TB | 無制限 |
Enterprise Plus 50 | データ容量課金 | ¥600,000 | 50 TB | 無制限 |
Enterprise Plus 100 | データ容量課金 | ¥1,000,000 | 100 TB | 無制限 |
DirectCloudのプランは容量ごとに細かく設定されており、どのプランもID数は無制限となっているため、自社の規模に合ったプランを選択しやすいでしょう。
添付ファイルパスワードの課題を解決し、企業の生産性を向上させよう
PPAP方式は、かつては有効とされたファイル共有手法でしたが、現代のサイバーセキュリティ環境においては、マルウェア感染や情報漏洩のリスクをはらむ危険な慣習となっています。
政府機関の廃止表明を機に、「脱PPAP」は単なるトレンドではなく、企業が生き残るための必須課題となりました。
PPAPの代替手段を検討する際には、クラウドストレージ、添付ファイルURL化サービス、セキュアファイル転送サービスなど、複数の選択肢が存在しますが、日常的な業務における利便性とセキュリティを両立させる上で、クラウドストレージが最もバランスの取れたソリューションであることが明らかです。
特に中小企業においては、コスト、管理者機能、サポート体制、使いやすさといった独自の視点でサービスを比較することが成功の鍵となります。
国産クラウドストレージ「セキュアSAMBA」は、ユーザー数無制限の料金体系や充実したサポート体制など、中小企業のニーズに特化した設計がなされており、セキュリティを強化しながら、従業員の生産性を大幅に向上させることが可能です。
この機会に、PPAPからの脱却を具体的に検討し、より安全で効率的なファイル管理への移行を推進することをお勧めします。