ファイル暗号化ソフト比較の前に!企業が選ぶべき本当のセキュリティ対策

「ファイル暗号化ソフトを比較したいが、どれを選べばいいかわからない」「情報漏えい対策を強化したいが、何から手をつければいいか悩んでいる」企業のIT担当者として、このような課題を抱えていませんか?
本記事では、ファイル暗号化の基本的な方法から、法人利用で本当に重視すべき比較ポイントまでを網羅的に解説します。
単なるソフトの機能比較にとどまらず、現代のビジネス環境に不可欠な、より安全で効率的なセキュリティ基盤を構築するためのヒントを提供します。
目次[非表示]
- 1.なぜファイル暗号化によるセキュリティ対策が重要なのか?
- 2.ファイル暗号化の主な方法と特徴を比較
- 3.要注意!その対策で十分?従来型ファイル暗号化の限界
- 4.新常識は「クラウドストレージ」での統合セキュリティ
- 5.法人向けファイル暗号化・管理サービスの選び方【5つの比較ポイント】
- 5.1.①セキュリティ機能の充実度(暗号化、認証、アクセス制限)
- 5.2.②管理機能と操作性(ログ管理、権限設定、UI)
- 5.3.③対応デバイスと拡張性
- 5.4.④料金体系とコストパフォーマンス
- 5.5.⑤サポート体制と信頼性(ISMS認証など)
- 6.【比較表】おすすめ法人向けクラウドストレージ3選
- 7.最適なファイル暗号化でセキュアな業務基盤を
なぜファイル暗号化によるセキュリティ対策が重要なのか?
はじめに、なぜファイル暗号化が単なるIT担当者の業務ではなく、企業経営における重要な課題となっているのか、その背景を3つの側面から解説します。
増加するサイバー攻撃と情報漏えいのリスク
近年、企業の規模を問わず、サイバー攻撃による被害が深刻化しています。
とくに「ランサムウェア」と呼ばれる攻撃は、企業のサーバーに侵入し、データを人質に身代金を要求する悪質な手口です。
実際に、VPN装置の脆弱性を突かれてサーバーが暗号化され、778万件以上の会員情報がリスクにさらされたスーパーマーケットチェーンの事例もあります。
このような外部からの攻撃だけでなく、内部からの情報漏えいリスクも無視できません。退職する従業員が顧客情報を不正に持ち出し、転職先で利用するといった悪意のあるケースや、機密情報を含むメールを誤った宛先に送信してしまうといった過失による事故も後を絶ちません。
ひとたび情報漏えいが発生すれば、企業の社会的信用の失墜や事業継続の危機に直結するため、データそのものを保護する「暗号化」の重要性が高まっています。
改正個人情報保護法で求められる「安全管理措置」とは
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、企業に対して個人データを取り扱う上での「安全管理措置」を講じることが義務付けられています。
このガイドラインでは、情報漏えいを防ぐための技術的な対策として、個人データや通信経路の「暗号化」が明確に推奨されています。
注目すべきは、万が一データが漏えいしてしまった場合でも、そのデータが「高度に暗号化」されていれば、監督官庁への報告義務が免除される可能性がある点です。
これは、適切な暗号化対策が、インシデント発生後の企業の負担を大きく軽減するインセンティブになることを示しています。コンプライアンス遵守の観点からも、ファイル暗号化はもはや「推奨」ではなく「必須」の対策といえるでしょう。
テレワーク普及による新たなセキュリティ課題
働き方の多様化により、テレワークは多くの企業で当たり前の選択肢となりました。しかし、オフィスという物理的なセキュリティ境界の外で業務をおこなうことは、新たなリスクを生み出します。
自宅のWi-Fiやカフェの公衆無線LANの利用は、通信傍受のリスクを高めます。また、業務用PCやUSBメモリの置き忘れによる物理的な紛失も、情報漏えいの大きな原因です。
さらに、会社が提供するツールが使いにくい場合、従業員が許可なく個人向けの無料ファイル転送サービスなどを利用してしまう「シャドーIT」の問題も深刻です。
管理者の目が届かないところで機密情報がやり取りされるため、重大なセキュリティホールになりかねません。こうしたテレワーク特有の課題に対応するためにも、場所を問わず安全にデータを保護できる仕組みが不可欠です。
ファイル暗号化の主な方法と特徴を比較
ファイル暗号化と一言でいっても、その方法はさまざまです。ここでは、代表的な3つの方法とその特徴、注意点を比較解説します。
Windows標準機能(EFS)での暗号化
WindowsのPro以上のエディションには、「EFS(EncryptingFileSystem)」というファイルやフォルダを暗号化する機能が標準で搭載されています。
ファイルを右クリックしてプロパティから設定するだけで、手軽に暗号化できるのが特徴です。
暗号化したユーザーは特別な操作なしにファイルを開けますが、他のユーザーアカウントからはアクセスできなくなります。
ただし、WindowsのHomeエディションでは利用できない点や、PCがログインされた状態では保護されないため、共有や組織的な管理には向いていない点に注意が必要です。
パスワード付きZIPファイル(PPAP)のリスクと代替案
ファイルをZIP形式で圧縮し、パスワードを設定する方法は、手軽さから広く使われてきました。パスワード付きZIPファイルをメールで送り、その直後に別メールでパスワードを送る方法は、それぞれの頭文字をとって「PPAP」と呼ばれています。
しかし、この方法は現在、セキュリティ上の多くの問題点が指摘されています。同じ経路でファイルとパスワードを送るため、通信を傍受されれば両方とも盗まれてしまうリスクがあります。
また、受信側でウイルスチェックができないことも多く、マルウェア感染の温床になりやすいという危険性もはらんでいます。これらの理由から、PPAPは現在では推奨されない方法とされています。
専用のファイル暗号化ソフト
市販されている、あるいは無料で提供されている専用のファイル暗号化ソフトを利用する方法もあります。
これらのソフトは、ドラッグ&ドロップで簡単にファイルを暗号化できるものや、特定のフォルダに入れたファイルを自動で暗号化するものなど、さまざまな機能を提供しています。
Windowsの標準機能やZIP圧縮よりも強力な暗号化方式を採用している製品が多く、より高いセキュリティレベルを期待できます。ただし、法人で利用する場合は、サポート体制やセキュリティ強度の保証がない無料ソフトは避け、信頼できる有料の製品を選ぶことが重要です。
要注意!その対策で十分?従来型ファイル暗号化の限界
前述したような従来型のファイル暗号化方法は、特定のファイルを保護するには有効ですが、現代のビジネス環境、とくにチームでの業務においてはいくつかの限界があります。
運用管理の煩雑さとヒューマンエラーのリスク
専用ソフトや手動での暗号化は、従業員一人ひとりの操作に依存します。
「どのファイルを暗号化するか」「パスワードをどう管理・伝達するか」といった判断を個人に委ねるため、ルールが形骸化しやすくなります。操作が面倒だと感じた従業員が、手間を惜しんで暗号化せずにファイルを送信してしまうかもしれません。
また、メールの宛先を間違えるといった単純なヒューマンエラーは、どんなに注意しても完全には防げません。
暗号化されていなければ、誤送信がそのまま重大な情報漏えい事故につながってしまいます。
ファイル共有・共同編集の非効率性
チームで1つのファイルを使って作業する場合、従来型の暗号化は大きな足かせとなります。
ファイルを更新するたびに、暗号化して共有し、受け取った側は復号して編集し、また暗号化して戻す…という非効率な作業が発生します。これでは、スピーディーな共同作業は望めません。
結果として、従業員は利便性を優先し、セキュリティが確保されていない方法でファイルをやり取りしてしまう可能性があります。
許可なきツールの利用「シャドーIT」を誘発
会社が提供するセキュリティツールが「使いにくい」「手間がかかる」と感じられると、従業員はより簡単な解決策を探し始めます。
これが、IT管理部門の許可なく個人向けのクラウドストレージや無料のファイル転送サービスを利用する「シャドーIT」です。
シャドーITは、管理者の目が届かないところで企業の重要なデータが管理されることを意味し、情報漏えいやウイルス感染の温床となります。
皮肉なことに、セキュリティを強化しようとして導入した不便なツールが、かえって新たなセキュリティリスクを生み出してしまうのです。
新常識は「クラウドストレージ」での統合セキュリティ
従来型のファイル暗号化が抱える限界を乗り越える解決策の一つとして、多くの企業が導入しているのが「法人向けクラウドストレージ」です。
これは単なるファイルの保管場所ではなく、セキュリティを業務プロセスに統合するためのプラットフォームです。
ファイル保護から「業務フロー全体の保護」へ
従来の方法が「ファイル」という点を個別に保護するのに対し、法人向けクラウドストレージは「業務フロー」という線でセキュリティを考えます。
ファイルを作成し、共有し、編集し、保管するという一連の流れすべてが、セキュリティで保護されたプラットフォーム上でおこなわれます。
従業員は暗号化を意識することなく、普段どおりの操作をするだけで、データは自動的に保護されます。これにより、ヒューマンエラーやルールの形骸化といったリスクを大幅に低減できます。
暗号化だけじゃない!多層的なセキュリティ機能
優れた法人向けクラウドストレージは、ファイル暗号化を基本としつつ、さらに多層的なセキュリティ機能を提供しています。
- 通信の暗号化:PCとサーバー間の通信をSSL/TLSといった技術で暗号化し、盗聴を防ぎます。
- 保管データの暗号化:サーバーに保存されているデータもすべて暗号化され、万が一の際にも内容は保護されます。
- 厳格な認証機能:IDとパスワードに加え、スマートフォンへの確認コード送信などを組み合わせる「多要素認証(MFA/2FA)」で、なりすましを防ぎます。
- アクセス制限:許可されたIPアドレスや端末からしかアクセスできないように制限し、不正な侵入をブロックします。
- ウイルスチェック:ファイルのアップロード時に自動でウイルススキャンをおこない、マルウェアの侵入を防ぎます。
これらの機能を組み合わせることで、外部からの攻撃と内部からの不正の両方に対応する、堅牢なセキュリティ体制を構築できます。
IT管理者の負担を軽減する一元管理機能
法人向けクラウドストレージは、IT管理者の運用負担を大きく軽減します。管理者は専用のコンソール画面から、全従業員のアカウント管理、アクセス権限の設定、利用状況の監視などを一元的に実行できます。
誰が、いつ、どのファイルにアクセスしたかという操作ログも記録されるため、不正の追跡や監査対応も容易です。
従業員一人ひとりにソフトをインストールさせたり、個別に設定を依頼したりする必要がなくなり、効率的で抜け漏れのないセキュリティ管理が実現します。
法人向けファイル暗号化・管理サービスの選び方【5つの比較ポイント】
自社に最適な法人向けクラウドストレージを選ぶためには、どのような点に注目すればよいのでしょうか。チェックすべき5つの比較ポイントを解説します。
①セキュリティ機能の充実度(暗号化、認証、アクセス制限)
最も重要なのがセキュリティ機能です。単に「暗号化対応」と書かれているだけでなく、その中身を確認する必要があります。
通信と保管データの両方が暗号化されるか、認証方法はID・パスワードだけでなく多要素認証に対応しているか、IPアドレスやデバイス単位でのアクセス制限が可能かなど、企業のセキュリティポリシーを満たす機能を備えているかを確認しましょう。
部署や役職に応じて、フォルダごとに細かいアクセス権限(閲覧のみ、編集可など)を設定できるかも重要なポイントです。
②管理機能と操作性(ログ管理、権限設定、UI)
セキュリティを維持するためには、管理のしやすさが不可欠です。管理者が全ユーザーの利用状況を把握できる操作ログ機能は必須といえます。
また、人事異動や退職に伴うアカウントの追加・削除や権限変更が、直感的かつ迅速におこなえるかどうかも確認しましょう。同時に、従業員にとっての使いやすさ(UI:ユーザーインターフェース)も重要です。操作が複雑だと、結局使われなくなり「シャドーIT」の原因になりかねません。
無料トライアルなどを活用し、管理者と従業員双方の視点から操作性を確かめることをおすすめします。
③対応デバイスと拡張性
テレワークや外出先での利用を想定する場合、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも安全にアクセスできるマルチデバイス対応は必須です。
また、将来的な事業拡大や従業員数の増加に対応できる拡張性も考慮すべき点です。ユーザー数や容量を柔軟に追加できる料金プランがあるか、将来的に他の業務システムと連携できる可能性があるかなども確認しておくとよいでしょう。
④料金体系とコストパフォーマンス
法人向けサービスの料金体系は、主に「ユーザー数課金」と「容量課金」に分かれます。また、初期費用と月額(または年額)費用がかかるのが一般的です。
自社の利用人数やデータ量を想定し、どちらの料金体系がコスト効率が良いかを比較検討しましょう。単純な価格の安さだけでなく、必要なセキュリティ機能やサポートが標準で含まれているか、オプション料金は発生しないかなど、総額でのコストパフォーマンスを判断することが大切です。
⑤サポート体制と信頼性(ISMS認証など)
万が一のトラブル発生時に、迅速で的確なサポートを受けられるかはサービス選定の重要な要素です。日本語での電話やメールによるサポート窓口が用意されているか、対応時間などを確認しましょう。また、サービスの信頼性を客観的に判断する指標として、「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」などの第三者認証の取得有無もチェックポイントです。
これらの認証は、サービス提供事業者が適切な情報セキュリティ管理体制を構築・運用していることの証明となります。
【比較表】おすすめ法人向けクラウドストレージ3選
ここでは、前述の選び方のポイントを踏まえ、多くの企業で導入実績のある代表的な法人向けクラウドストレージを3つ紹介します。
サービス名 | 特徴 | セキュリティ | 管理機能 |
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最適なファイル暗号化でセキュアな業務基盤を
本記事ではファイル暗号化についてその重要性から具体的な方法、そして従来手法の限界と新たな解決策までを解説してきました。
もはや、ファイル暗号化は単体のソフトを導入して終わり、という時代ではありません。ランサムウェアの脅威、改正個人情報保護法への対応、そしてテレワークの普及といった現代のビジネス課題を解決するには、ファイル単体を保護する「点」の対策から、業務プロセス全体を保護する「面」の対策へと発想を転換する必要があります。
その解決のためにおすすめなのが法人向けクラウドストレージです。堅牢なセキュリティ機能と、管理者の負担を軽減する運用性、そして従業員の生産性を損なわない利便性を兼ね備えたサービスを選ぶことが、真のセキュリティ対策への第一歩となります。
この記事で解説した選び方のポイントを多く満たすサービスの一つとして、国産のクラウドストレージがあります。例えば、セキュアSAMBAは、通信とデータの暗号化はもちろん、IPアドレス制限や端末認証といった法人利用に不可欠なセキュリティ機能が標準で搭載されています。
直感的に使える操作性で従業員への導入もスムーズに進めやすく、IT管理者の負担を軽減します。
また、ユーザー数無制限のプランがあるため、従業員数の増減に柔軟に対応でき、コストを予測しやすい点も中小企業にとって大きなメリットです。無料から始められるプランも用意されているため、まずは試験的に導入し、その操作性やセキュリティレベルを実際に体感してみてはいかがでしょうか。