厚生労働省が発表している「テレワークを巡る現状について」によると、テレワークで感じたメリットとして「ストレスが軽減される」と回答した人が35.0%にのぼる一方で、テレワークの不便な点として「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」を指摘する声もあります。
テレワークにストレスを感じる要因はどのようなところにあるのか、ストレスをそのままにしておくことのリスクや、テレワーク下のストレスの対策方法について解説します。
テレワークによるストレスの例
テレワークにおけるストレスはどのような場面で感じやすいのか、代表的な例を確認していきましょう。
コミュニケーションがとりにくい
オフィスで働いているときと比較してテレワークではコミュニケーションとりにくいと感じ、相手の顔が見えないために反応がわかりにくかったり、情報共有が不足したりすることに不安やストレスを感じる人が多いようです。
厚生労働省が発表している「テレワークを巡る現状について」では、テレワーク業務時の不安として「非対面のやりとりは相手の気持ちがわかりにくく不安」「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安」「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安」という点をあげる声がありました。
孤独感がある
「テレワークを巡る現状について」に掲載されている調査「テレワーク環境における心理的変化」において、「寂しさや疎外感を感じる気持ち」が増える・やや増えると回答したひとはあわせて32.8%にのぼりました。
コミュニケーションの不足があり、気軽に相談したり感情を共有できたりする相手がいないと感じると、孤独感を強めストレスをため込むことにつながるようです。
運動不足や環境整備の不足
通勤が亡くなったことにより運動不足になったり、自宅とオフィスとの作業環境の違いにより体の疲れを感じたりすることも、テレワークによるストレスの一例です。
体の不調が不眠や気分の落ち込みにつながり、メンタルヘルスを悪化させる要因になることもあるため、注意が必要です。
オンとオフの切り替えができない
仕事とプライベートの切り替えがうまくできないと、休息がうまく取れなかったり、休みの日にも仕事のことを考えてしまったりして、心身のストレスにつながります。
長時間労働や生産性低下の原因となることも考えられるため、社員個人の問題ととらえず会社としても対策を考えるべきでしょう。
テレワークでストレスを感じる要因
テレワークでストレスを感じる要因には、さまざまなものがあげられます。
厚生労働省が運営するサイト「こころの耳」で公開されている「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」では、ストレス要因は以下の3つに分けられるとされています。
テレワーク下における職場のストレス要因
テレワーク下における職場のストレス要因は多種多様で、ヒアリング調査でも多くの企業からさまざまなストレス要因の指摘があったとされています。
- 対人関係
- 職場環境(物理的要因)
- 仕事の量的な負担
- 適正度
- 職場環境(心理社会的要因)
職場のストレス要因は上記の5つに分類することができます。
対人関係はコミュニケーションにおける不安、適性度はICTへの苦手意識や作業効率の低下に関わるものが主で、仕事の量的な負担もあわせて、解決には工夫や慣れが必要でしょう。
職場環境(物理的要因)には自宅の作業環境や機器が整っていないことや、光熱費などの費用の負担があげられており、会社による補助で解決が可能です。
もっとも注意が必要と考えられるのが職場環境(心理社会的要因)で、勤務時間外の対応を強要されたり上司から監視を受けたりするハラスメント行為や、評価や処遇に関する不公平感が指摘されています。
離職や社会的信用の低下につながる前に、早急に対策を考える必要があるでしょう。
職場以外の要因
テレワークでストレスを感じる要因は職場以外にもあり、自宅でテレワークをおこなうことについて家族から理解や協力が得られない場合や、一人暮らしで疎外感や孤独感を感じやすい場合などがあげられます。
また、仕事とプライベートの区切りがあいまいになり、ワークライフバランスが崩れることもストレスにつながります。
個人的な要因
テレワーク下における職場のストレス要因として最後にあげられているのが、生活習慣や体調管理に関する個人的な要因です。
通勤や外出がなくなることで運動不足に陥り、生活リズムがズレたり睡眠が十分にとれなくなったりすることがあげられます。
自宅の限られたスペースで作業を続けていると気分転換がしにくいため、身体的な不調や作業効率の低下にもつながるでしょう。
テレワークによるストレスを放置するリスク
テレワークでは似たような環境でもストレスを感じる人と感じない人がいますが、個人の問題として企業が放置してしまうと、業務にさまざまな影響が出る恐れがあります。
テレワークによるストレスを放置するリスクについてみてみましょう。
業務効率や生産性が低下する
ストレスを感じながら作業を続けていると、当然ながら業務効率や生産性は低下します。
オフィスでの実績をもとに「このくらいの作業はこのくらいの時間で終わるはず」と計画を立てても、思い通りに進まず遅れが蓄積して、長時間勤務や時間外労働につながってしまう危険もあります。
社員のメンタルヘルスに影響が出る
心身のストレスはメンタルヘルスを悪化させる原因になります。
気分の落ち込みや視野の狭まりによって作業効率が落ち、さらにストレスをため込むという悪循環にも陥りやすいでしょう。
離職につながる可能性も
テレワークによるストレスをため込んでしまうと、最悪の場合は離職につながります。
社員を感染症から守ったり働き方の多様化を叶えたりするためにテレワークを導入したのに、会社から去られてしまっては本末転倒になります。
企業は柔軟に対策を考えて社員のストレス解消に勤めるべきでしょう。
企業がおこなうべきテレワークのストレス対策
企業がおこなうべきテレワークのストレス対策の一例をご紹介します。
チェックリストで労働環境を把握
まずはテレワークの労働環境がきちんと整っているかチェックをすることから始めましょう。
厚生労働省が運営するサイト「こころの耳」では、「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」と「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」が公開されています。
このチェックリストを参考に、作業環境がどのくらい整っているのか、どの部分が足りていないのかを把握し、ストレスを生まない環境づくりをおこないましょう。
テレワークの作業環境を整える
チェックリストで課題が可視化できたら、次は改善策を取り入れましょう。
自宅へのオフィス設備導入にかかる料金の補助をおこなったり、テレワークにかかるインターネット使用料や光熱費の費用負担割合を明確にしたりすることで、社員のストレスを減らせます。
どうしても自宅の環境を整えることが難しい場合は、サテライトオフィスの導入という方法もあります。
頻繁にコミュニケーションをとる
テレワークにおいてストレスを生んだりため込んだりしないためには、意識的にこまめなコミュニケーションを心がけることが大切です。
業務のフォローとしてメンター制度や1on1を取り入れるほか、オフィスでの雑談レベルでちょっとした気づきでも投稿してよいグループチャットを作るのもよいでしょう。
オンライン交流イベントを開催する
気軽なコミュニケーションの場として、オンラインのサークルやランチミーティングなどを開催している企業は多くあります。
社員同士がつながり交流を楽しめる催しを考えて、ストレスや孤独感を解消できるよう工夫をおこないましょう。
テレワーク環境下での評価基準を明確にする
評価に対しての不安を軽減するためには、テレワーク環境下での評価基準を明確にする必要があります。
社員のモチベーションを保つためにも、管理者が社員と一緒に目標を考え、設定した目標に向かって進めていく過程を共有するなど、こまめな面談と社員の自主性を大切にすることを心がけるとよいでしょう。
管理監督者にラインケア研修を実施する
メンタルヘルスの問題の予防や対応方法について学ぶ管理職向けの研修「ラインケア研修」をおこなうことも、ストレス対策として有効です。
部下の不調の兆しを早期に発見する方法や、適切なケア方法を学んでおくことで、ストレスが大きな問題に結びつくことを防げるでしょう。
運動や食生活の改善をうながす
運動や食生活など生活習慣が変わることによるストレスは、個人の意識によって改善することが主になりますが、会社が啓蒙することでよい方向に導けることもあります。
オンラインのヨガサークルや健康知識に関するセミナーを実施している企業もあるため、自社にあった方法を考えてみるとよいでしょう。
ストレスの要因を減らして快適なテレワークを実施しよう
テレワーク下におけるストレス要因には、コミュニケーションのとりにくさや作業効率の低下、オンとオフの切り替えの難しさなどさまざまなものがあります。
社員がストレスを感じている状況を放置していると、業務効率や生産性の低下、メンタルヘルスへの悪影響につながるため、企業として早急に対策をおこなう必要があるでしょう。
ストレス対策には、テレワークの作業環境を整える、オンラインで頻繁にコミュニケーションをとる、ラインケア研修を実施するなどいろいろな方法があります。
ストレスの要因を減らして快適なテレワークを実施できるよう、自社にあったものを選び工夫を加えながら、多角的に取り組んでいきましょう。